実存主義アプローチのまとめ
実存主義;哲学の一種、あるものの考え方
「ものの考え方」とは具体的に
1-a. 存在論;
究極的に存在しているものは何であると考えるか
ex) イデア、神の意思、等々
1-b. 認識論;
「知っている」とはどういうことか
なぜ「知る」ことが出来るのか
知る」ための技術、科学技術の基礎
1-c. 価値観;
善とは何か、悪とは何か、自分はどう生きるべきか
要するに哲学とは;
人生において究極的なものは何か
その究極的なものをいかにして知りうるのか
知った結果どう動くのがよいかを考えるもの。
実存主義的なものの考え方とは
2-a. 実存主義における存在論
究極的に存在しているものとはなにか?
⇒ 各個人の具体的な体験や知覚
2-b. 実存主義における認識論
何を持って「知る」のか?
⇒ 自分自身の体験学習
実際に見て、聞いて、触って感じ取る感触
2-c. 実存主義における善悪とは
自分自身にとって意味のあることこそが善
⇒ 信念、矜持
つまり、個人ごとの生き様、その人らしさを大切にする考え方
実存主義アプローチが必要とされる背景:
1. 実存神経症:
自分らしく生きるとはわからないという訴え
依存できる安定した価値観の崩壊
2. 慢性の孤独:
都市化による相互依存から個人志向型の社会への変化
3. 伝統的価値観(霊と肉とをわける二元論)からの脱却
4. 現代の自己疎外:
組織に所属して生活する→自分らしく生きられない
実存主義のカウンセリングへの影響
1. 因果論への懐疑
健全な人間とは;
自分で自分の生き方を選べる
外界や過去や神に縛られない
⇒ クライアントの自己決断を迫る
2. 適応論への批判
従来の心理療法;
社会への適応を目指し不適応を治療する
実存主義的アプローチ;
自己実現を第一にすえて、必ずしも社会への適応を志向するわけではない
3. 科学主義への反省;
科学的に数量化された統計データに個人は現れない
個人の独自性を重んじ、実際にその人がいる文脈において、直にその人と向き合う
4. 洞察(覚知)の超克
従来の心理療法:自己理解(洞察)
問題となる心理の原因を突き止めて、自己を概念化していくのが精神分析や来談者中心療法
ex) なぜ上司が怖い⇒父親と退治する経験が無かったため
なぜ人前でどもってしまうのか⇒言いたいことを隠しているから
実存主義的アプローチ:自分自身になりきる
原因ではなく、今、ここで、体が感じ取っている感覚になりきることが治療につながる
ex) ジェンドリンのフォーカシング
5. プロフェッショナリズムへの批判
精神分析・来談者中心療法;
プロフェッショナリズム
ex) クライアントからセラピストへ愛情表現に対して
⇒ 逆転移(対抗感情転移):父親への愛情を分析者に転移している
「貴方は私を好いているのですね」と共感的理解を示す
いずれもセラピストという役割に応じた専門技術的なやりとり
セラピストが自身を表出することはせず、クライアントの洞察を深めることに徹する
あくまで専門家による指導や治療というスタンス
実存主義的アプローチ:エンタウンター
役割や建前を抜け出した自分、本音を相手に伝える
⇒ 感情体験により患者は癒されると考える
上下関係の無い人間同士が向かい合い、ぶつかり合い、心を通わせることにより
それぞれが自身の生きる意味を想像していく
6. 意味への意思(V.E フランクル)
精神分析的な超自我;
「~~しなければならない」という義務感や倫理
時に快楽原則とぶつかりあい抑圧となりうる
(一人だけ先に帰ると申し訳ないという罪悪感を作り出す)
実存主義的の生きる意志;
義理や義務に縛り付けられた超自我ではなく
自分の運命、宿命、境遇と対決し、そこにいきつい未を見出す姿勢
(フランクルは国外脱出できたにもかかわらず、
老齢の父のそばにいるためナチス政権化のドイツにとどまった)
7. 折衷主義志向
ヒューマニスティックアプローチに共通する特徴
ムスターカス "Life is not a theory(人生は理論に非ず)"
理論ありきではなく人間ありきの考え方
⇒ 特定の理論、技術にこだわらないため必然的に折衷主義となる
実存主義的カウンセリング
1. 人間観
人が生きるとは、絶えず古くなっていく自分自身を乗り越えていくこと
⇒ 自己決定プロセスの連続
日々生まれ変わる自分は一人で生きていけない
⇒ どこかで他者とかかわりあいながら自分の生活を切り開いていく
2. 性格論
実存主義には性格論、パーソナリティ理論が無い
(一定の性格類型に個人を当てはめることは「理論 → 具象」という非ヒューマニズムの構図)
3. 病理論
なぜ問題行動が起こるのか;主体的自己決定性が失われているから
・自己同一性を維持するため、今までの自分にこだわり新しい自分を受け入れられない
・自分にとっての人生の意味が創造できない
⇒ 自分らしく振舞い、行動することで、たとえ新しい試みに失敗しても
そこからさらにまた自分らしく生きていける
4. 治療目標
抽象の世界に逃げ込むのではなく具体的に身を挺する(コミットメント)人間像
5. カウンセラーの役割
精神分析でいうところの超自我を強化する手伝い
(精神分析では超自我による罪悪感を解消するため、超自我を緩める)
⇒ 他者から摂取した従来の超自我を粉砕し
あらたに自分らしい超自我を作り直す試みの支援
6. クライアントの役割
「彼の人なり、我も人なり」
セラピストが専門家だからといって仰ぎ見る(精神分析的)必要なし
カウンセラーの立てた治療計画の協力者(行動療法)でもない
与えられた時間を自由に使う(来談者中心療法)でもなく
⇒ カウンセラーがクライアントにエンカウンターするのと同様に、
クライアントもまたカウンセラーに対しエンカウンターする
(その場その場の感情になりきる)
問題点
1. 表層のエンカウンター
クライアントが怒りを爆発させるだけではなく、
怒りのそこにある愛の感情で、より深層レベルのエンカウンターが必要であり
その一つ一つを知的な洞察ではなく感情体験していかなければならない
2. 実存主義の思想だけを取り入れる危険性
幼児的な自己中心性と結びつきやすい
3. 宗教との葛藤
実存主義:具象の世界に生きる(孤独な実存として生きる)、ときに宗教の権威に逆らう
宗教:観念論の世界、祈ることの安らぎやに安寧する、「御心」のままに生きる