冬将軍の襲来で 山里は

 

猛吹雪のホワイトアウトに見舞われました

 

雪の粒が屋根や田畑をたたき 

 

真っ白なピースを埋めていきます

 

 

 
 
閉じ込められた

 

こんな日の夕暮れは

 

ストーブのゆらめく火に照らされて

 

一杯のホットウイスキーを少しずつ  口にふくみ

 

その香を慈しみながら 読書に耽ります

 

モノトーンに染められた外界は 

 

荒れ狂う自然の猛威の中でも

 

けがれなく    純粋無垢で

 

まるで「イーハトーブ」(心象上の理想郷)のようです

 

 

 
 
 

台風  雪の結晶  雪  

 

宮沢賢治の作品のほとんどは 

 

彼が37歳で亡くなった後公表されたものです

 

彼は生前 無名の童話作家でした

 

彼との出会いは   中学時代に学んだ

 

「セロ弾きのゴーシュ」でしょうか

 

         

 

セロ弾きのゴーシュ (宮沢賢治絵童話集)

 

賢治の作品は 読み返すと

 

愛するものを失った深い悲しみや病気や死の恐怖

 

他人への嫉妬・・・「人生の迷いのあと」が

 

彼が問い続けた「人生の意味」

 

求め続けた「理想郷」とともに

 

また 違った姿を見せるのです

 

雪の結晶  雪の結晶  雪の結晶  雪の結晶  雪の結晶

 

私は2年前の1月  兄を失くしました

 

その時兄の遺品の中に

 

一冊の通帳が見つかりました

 

兄は大学で法律の道を進むことを選びましたが

 

一方で 経済的に学べない子どもたちに

 

家庭教師のボランティアをしていました

 

キャリア官僚の道をのぞんでいた亡き父は 

 

このボランティア活動を嫌がり

 

親子はよく衝突しました

 

40年以上も前の話ですから

 

私も忘れていましたけれど 

 

兄は続けていたようです

 

病に侵された身体で・・・

 

通帳には NPOの団体からの謝礼が

 

一銭も使われることなく 貯められていました

 

金額の多寡ではない価値が

 

兄にはあったのでしょう

 

アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲さんは 

 

自分は「セロ弾きのゴーシュ」だと

 

言われていました

 

 

わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 中村哲が本当に伝えたかったこと

 

「人は生きて死ぬことの意味を 忘れているのではないか」と。

 

何に使おうとしていたのか

 

わからぬ通帳

 

兄もまた セロを弾いていたのでしょうか

 

ブルー音符 雪の結晶 ブルー音符 雪の結晶 ブルー音符

 

今年 私は

 

2歳年上だった兄に 追いつきます

 

幼き頃   いつも 後を追っていたあの背中を

 

追い抜く日が来ようとは

 

夢にも思っていませんでした