山里は どこに行くにも

 

着替えて車に乗って山を下っていかなければならない。

 

よく 「最寄りの目印を教えてください」と言われるが、

困る・・・

 

「最寄りのコンビニからは6キロ山に登ったところ」なんて言われても迷惑だろう。迎えに行った方がマシだ。

 

最寄りの街には農業資材を売っているホームセンターはあり、

いくばくかの花苗も置いているが、流行り物はない。

 

ちょっとおしゃれと言われている園芸店は、半日かけて行かねばならない。


面倒だから足が遠のき、この数年はのぞくこともなかった。

 

昨年仕事を卒業した。

 

憧れの自由時間を謳歌するぞ

 

園芸店に車を駆ってお出かけだ

 

おおおおお 素晴らしい花苗の数々     

 

パンジーがヒラヒラで可愛すぎるぞ

 

まるで「リカちゃん人形」のようではないか・・・

 

「リカちゃん人形」は私が小学校の頃にやってきた着せ替え人形だ。

 

それまでの着せ替え人形は肩と股関節は動くが、直立不動の人形であった。

 

「リカちゃん人形」は手足に針金が入っていて自由に曲がる。

 

椅子にだってオッチョンできるのだ。

 

お顔だって、おメメぱっちり、髪は栗色、おしゃれな服を着ている。

 

同級生は皆買ってもらっていた(ように私は思っていた)。

 

私も欲しい。

 

恐る恐る父に言ってみたが、買ってきたのは、直立不動の異国のお顔の人形であった・・・

 

諦めた私は、同級生の家に毎日押しかけ、「リカちゃんごっこ」に勤しんだ。

 

しかし、「リカちゃんはだめ。」「友達のいずみちゃんにして」と言われ、私に「リカちゃん」の役はまわってこなかった。

 

その後「リカちゃん」は恋人やパパ・ママ・双子の姉妹まで出現し、

 

とうとう「リカちゃんハウス」なるお家まで手に入れた・・・


遠い存在になってしまった・・・

 

「リカちゃん人形」にそっくりのヒラヒラパンジーを

 

私はせっせと園芸店通いをし、お買い上げした。

 

高い、高すぎるぞ!  


たかが1年草ではないか!

 

家に帰るともったいなくて、一株ずつ鉢に植えて毎日飽きもせず眺めた。

 

 

ブログを楽しませていただくようになって、私は気づいた。

 

「なんと、リカちゃん人形には兄弟姉妹のような品種もあるのか。

おうちもアンティーク調のおしゃれーな鉢にいろいろなお友達と一緒に植えて、ココヤシのお布団まで掛けるのか。」

 

おうちを見にいこう・・・

 

高い!なんだこれ・・・


たかが 鉢ではないか・・・

 

私はここでやっと自分を取り戻した。

 

毎日 私はせっせせっせと私の「リカちゃん人形」の世話をする。

 

雪が降りそうになると部屋に取り込み、あまり過保護にしてはいけないと日光浴もさせる。

 

誰か気づいてくれないかなあ。

 

こんなに可愛いではないか。

 

しかし、ここでも私はやっと気づいた。

 

田舎のジジババには「リカちゃん人形」は

 

なんの興味の対象でもないようだ。と

 

 

 

 

 

(念の為)

リカちゃんは今も「タカラトミー」から販売されていました。

 

双子の姉妹の下に三つ子や、綺麗なおばあちゃんまで登場し、

友達も5人まで増えています。

 

友達の「いずみちゃん」や恋人の「なんたらちゃん」はいません。

 

おじいちゃんはいないのかなあ。

 

「リカちゃん」の人生にも色々あったようです。