私の家は、山里の丘陵地帯の上の方にある。
お天気さえ良ければ、毎日村の周りを歩く。
村はずれの村を一望できるところに1本の杉の大木が立っており、
その下に「野神」と書いた石碑がある。
圃場整備の際、村に点在する石の「神」を集めて
ここに祀ったのだという。
ちなみにこの地は「〇〇おろし」と言う大風が吹く。
このため、樹は皆傾いて立っている。
「野神」は読んで字の如く「野の神」である。
古来 田畑の安寧と五穀豊穣を司る 自然信仰の「神」として
村人たちを守ってきた。
「野神さんの日」と言い、供物を供える風習もあったが、今は廃れてしまった。
田舎道の坂を降りて川を渡ると、村の神社がある。
拝殿のある立派な神社であるが、神主はいない。
村人たちが守っている。
ここに祀られている「神」は3柱ある。
そのうちの一つ金毘羅さんは、昔我が家の山の上にあったものを
移設されたと聞いている。
その神社の傍らに「山の神」の石碑が建っている。
「山」に住み、「山」を生業にした先人たちの「神」である。
日本古来のこの「神」もここに合祀されている。
元祖、この地に暮らし始めた人たちは
自然の営みを「山」と「野」の神の仕業と畏怖し、
石や樹に魂が宿ると崇拝し暮らしてきたのだろう。
帰り道 雪がまばらに消えた土手に水仙を見つけた。
いつの間に咲いたのだろう。
地生えの花は、風に煽られ、雪を被り、土に恵まれなくとも咲く。
知らぬ間に芽吹き、育ち、花をつける。
外来者の「私」は、いつになったら
この花のように迷わず、挫けず、時を紡げるようになるのだろうか。
神の暮らす郷の
「神」たちよ
教えてくれないか