■人間じゃない〈完全版〉
■作:綾辻行人
綾辻行人の単書未収録短編集の文庫版であり、増補による完全版。
本格ミステリーの再興を牽引した綾辻行人、でもその作風は「小説ならではの技巧」を凝らしながらも幻想ホラーの領域が色濃い印象なのです。
この作品集も類にもれず。
冒頭の「赤いマント」はミステリーでありつつもそのベースには怪談(都市伝説)が置かれていて。
さらに、「崩壊の前日」では一層の不条理さや不安定さが文体そのものから醸し出されて世界観を構築して、めまいを誘発するかのよう。
読み終えるまで、実はこれが現実に解決可能なもの(ミステリー)なのか、解決しないもの(ホラー)なのか、あるいはその両方が混在しているものなのか、惑うところまでがこの綾辻作品の味わいだと思ってます。
表題作の「人間じゃない」の位置付けがまさにそれかと。
ゆらゆらと視点と共に世界も揺らぐような表現方法に触れていると、自分がいかに御大に多大な影響を受けているのかがわかるという……
ひとつひとつの作品がある種の番外編に位置付けられていたりするのも面白いです。
この一冊では完結しない、綾辻行人ワールドにおける世界の一端となる作品集。
もとを知っているからこその面白味があるのは確かなので、未読を既読に、前作を再読したいという欲にも駆られます。
まず手始めに館シリーズから、となるとなかなかの長丁場になりますが、「この作品を描いていた頃の話か」と、「仮題・ぬえの密室」への感慨深さも増してみたり。
そんな一冊でした。
