■永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした
■作:南海遊
母親の葬儀に間に合うことのできなかったブラッドベリ家長男ヒースクリフ。
そこで彼は最愛の妹コーデリアの死に直面する。
妹を救うため、ヒースは死に戻りの魔女とともに陰惨なる事件のタイムリープに挑むーー
『死に戻り×道連れ×不老不死』
特殊設定ミステリはその特殊性が物語の構築に対して大きな意味を持たなければと思うのです。
設定がもたらす効果という意味で、永劫館は物語への組み込み方と踏み込み方が面白いなと感じた次第。
密室殺人における謎には、「どうやってそれをしたのか」と「なぜそれをしたのか」が犯人へと続く足がかりになるわけですが、今回においては、「なぜ」が常に付きまとってきました。
なぜそれをするのか、なぜそれをしないのか、なぜそれは起きたのか。
人の心のままならなさの中に、タイムリープものに付随する「本人の意識」がその後の行動(選択)に作用していくのも良いです。
リープした際、本人は世界線を超えて意識の連続性を保つが、分岐点となった世界線はその後も継続するのか、その瞬間に消失するのか。
それによって、やり直しの際の後悔や罪悪感の所在に心が揺れもします。
悲しい苦しい結末、バッドエンドのその先も世界が続くとすれば迂闊なことはできない、という、試行錯誤への足枷の有無が物語の旨みにもなると感じました。
能力に対する制約も興味深いです。
死に戻りのタイムリープの中で、一度目にはわからなかった背景が見えてくる。
制約を受ける中で引き継がれる語り手自身の記憶によって、情報が蓄積していき、推理の材料がそろっていく過程も、読み返して気づく伏線や描写の巧妙さとして存在している印象。
特に語り手の視点で綴られているため、初読では流してしまった台詞回しにも、種明かしをされた状態で読むと、「なるほど、ここはそういうことか」となるわけです。
どちらかといえば探偵役となるヒースや死に戻りの魔女など、題材的にもキャラ造形的にもライトな質感なのですが、そこに「呪い」の陰惨さがじわじわと時限装置的に効いてくるのが実に好みの構造でした。
意味がわかると怖い、という類の不穏さも含めて、本当の謎はどこにあったのかを思考する作品でした。
もしもこの続きがあるのなら読みたい、そんな気持ちになれます。
