■迷路館の殺人
■作:綾辻行人
ミステリ作家が建てた迷路館を舞台に、集められたのは彼に見出され育てられた弟子とも言える作家を含む8人の男女。
主によって彼らに課せられたのは、この迷路館を舞台とした本格ミステリの短編新作だったがーー
新装改訂版にて、かなり久々の再読です。
十角館の殺人から続く館シリーズ第3弾は、作中作という構造で登場しました。
この作中作というのが、実にいい装置なのです。
行われる陰惨な事件も、ケレン味あふれる見立て殺人として虚構のベールがかかり、非現実的な面白さへと変換されていく。
すべてが謎解きのための『舞台装置』として機能し、作り込まれた虚構だと理解させられるわけです。
しかも、迷宮といえば、ミノタウロス。
ギリシャ神話になぞられた名を冠する部屋に、仮面や剥製、像の存在も小道具、大道具として世界観の構築に一役買ってくれてます。
どこまでも作り物めいた世界。
リアルを追求してしまうと損なわれるであろう独特の味わいがここにはあります。
虚構の舞台ならではの奇妙なほどのライトさと質感(肌感?)に、なぜかじんわりとした懐かしさすら覚えました。
シリーズ3作目にして機能する仕掛けにもうなりつつ、伏線として用意された『不自然さ』にどこまで気づけるのか。
そこに着目していくのも楽しい一作。
なお、改訂版の後書きにもある通り、作品の中に出てくる最新機器は今となっては過去の遺物となるものもあります。
パソコンではなく、ワープロ。しかも記録媒体はフロッピーディスク。
スマホどころか、携帯電話が存在しない。
こういった存在に対し引っ掛かりを覚える方もいるかもしれないけれど、いっそレトロな趣として楽しむのもありだなと思った次第です。
ちなみに、講談社ノベルズ版の装丁がまた実に凝っておりまして。
チャンスがあったら、ぜひ実物を一度手に取って欲しいです。
虚実ないまぜのあの感動が、新装改訂版だと得られないのが唯一残念。
映像化不可能とされた十角館の殺人、および時計館の殺人が実写ドラマ化された館シリーズ。
現在鋭意執筆中の最新作の刊行が待ち遠しいです。
