■死体埋め部の悔恨と青春

■作:斜線堂有紀


「助けてやろうか?」

英知大学への初登校日の夜、祝部は、最高だけど最低な赤ジャージの先輩である織賀に、死体埋め部の勧誘を受けてしまった。



死体埋め部という、ありえないくらいに不穏で不謹慎で不吉な部活名と、死体を埋めに行く道中で交わされる死体が抱える謎に対する推理劇。


なぜ、この死体は左手の指だけが全て折れているのか。


散りばめられた情報と違和感から、実際はどうあれ、それらしい答えを導き出す思考ゲームのような最悪の時間が、一度だけでは終わらなかったという、その意味。

なのに、それ以外の、死体埋め部の活動以外では最高に魅力的な先輩との時間がどうしようもなく得難いものに感じられてしまう業の深さ。


「承認しよう」


赤ジャージの先輩から与えられるその一言で喚起される感情すらひとつではなくて。


死体と一緒に後部座席に押し込まれるなんてタチの悪い冗談か茶番であってほしいのに、この悪夢みたいな出来事全てが現実というシチュエーション。

そこにじわじわ感情が侵食されていくのがクセになります。


当たり前に続くと信じていた日常は、ほんの一瞬で崩壊する。

そして、一度崩壊した日常も、むりやりにても取り繕えばそれなりの形でまた運用される。

もちろん、何事も起きず、何も知らなかった頃には戻れないし、思考の一部はいつだって死と直面した事実とを引きずったままだけれど。


斜線堂有紀作品は、優しくて残酷な人間の執着の描き方が好みだなぁと思うなどしてます。

愛とか正義とか倫理観とか、そういうものを一旦横に置いておいて、「自分にとっての大切なもの」に焦点が当てられているのが良きです。

織賀先輩と祝部の関係の間に横たわる、頑張って綺麗にラッピングしてみたけど歪さが隠しきれない、そこに痛みと不安と奇妙な優越が混ざり合う空気感、そんな読み心地。


ゆらゆらと常に世界も価値観も常識も感情も揺れていて、絶望と救済は表裏一体で、日常と非日常は紙一重で。

こんなにも脆弱な世界に自分たちはいるのだと思わせる作品でした。