タロットカードの物語
…*…天命の杯をあなたに注ぐ…*…
赤く、蒼く、淡く、オパールのような光の移ろいを見せながら、天の河は流れ、ゆるりと巡る、巡る、巡る。
流転する魂が星々の間を巡っていくのを、私は宮殿の月光水晶をはめ込んだ窓越しにそっと見守り、祈る。
あれは、己の在るべき場所を探し求める旅路でもあるのだと、遠い昔、ここで天命の監査役を務めていた曽祖父が教えてくれた。
与えられた使命の果てに、あの魂たちは幸いの国へたどり着くのだとも語ってくれた。
「さあ、時間だ」
厳かで、けれど慈しみを宿した声とともに、上役であり教育係でもある父が、優しい温度で私の背をそっと押してくれる。
向かうのは儀式の間だ。
長く、深く、螺旋を描く階段の先――扉の向こうに待っているのは、上も下もなく、ゆるやかに明滅しながら浮遊する無数の砂時計たちだ。そのひとつひとつに、これからあの星々の河へと放たれる魂が眠っている。
私はここで、見守る者としての責務を果たす。
私の手には、天と地を繋ぐ運命のゴブレットがふたつ。
神の歌を唇に乗せれば、右の杯に智慧の水が、左の杯に加護の光が満ちる。
使命を伝えるだけでは足りない。
進むべき道を指すだけでも足りない。
これから始まる魂の旅路がたとえどれほどの困難に見舞われたとしても、私はあなたを見守り、乗り越えていけるよう手助けするのだと示すための儀式だ。
「私の心は常に、あなたの傍らに」
無垢なる魂に祝福を注ぐため、私は目の前の砂時計にふたつのゴブレットを傾けた。
了
◆タロットカード:XⅣ 節制
キーワード:流転、成長、調和、エネルギーの循環
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