■ 詐欺師は天使の顔をして
■作:斜線堂有紀
類稀なるカリスマ霊能力者・子規冴昼が、
忽然と姿を消した。
それから、3年。
「霊能力詐欺」の共犯者であり、同じだけの期間彼を待ち続けていた要のもとに、突然、冴昼から連絡が入る。
超能力者のいる世界で、自分に冤罪がかけられている、と。
特殊設定ミステリーとして、現実から「電話」を通してするりと異世界に踏み込ませてくるのが印象的な作品。
超能力が当たり前の世界での『常識』を確認しながら、非能力者にしかありえない犯行と断じられた事件を解き明かすのが要の役回り。
この、異邦人として、手探りで自分と相手の「当たり前」を疑い、矛盾点を見出し、時間を解決する構図がおもしろいです。
しかも、解決方法には詐欺師というバックボーンがいい味を出してくるわけです。
設定も背景も舞台装置も、意味を持って配置されて機能しているのは心地よい!
そして、斜線堂有紀作品は、危うげな関係性に惹かれてしまいます。
ふたつの事件とひとつのエピローグによって描かれるのは、追うものと追われるもの、特別な存在と特異な存在、そして執着する側とされる側の対比。
ライトな質感を宿しながら、その実、『執着』の物語であるのだと、双方の視点を通じて見えてくるものの違いごと楽しいです。
まるで神からスポットライトを当てられているかのような唯一無二の存在感を放つ冴昼と、そのスポットライトをありえないほど巧みに扱える要。
その関係性は、探偵と探偵助手といったカテゴリよりも、舞台に立つ役者冴昼と、彼をより輝く存在へと押し上げる演出家にして脚本家の要という構図に見えてきたり。
見出されたものと、見出したもの。
双方の想いが、信頼と驚嘆と不安とあらゆるものを燃料にしつつチリチリと焦げつくようで素敵。
読み終えた後に、彼らのその先が知りたくなる、でも知らずにいたい。
そんなシュレディンガーの猫箱状態を望んでしまう作品でした。
