◆オーダーメイド物語
【誕生日の物語】
ご依頼主様の誕生日石と誕生日花をキーワードに綴る少し不思議な物語。
お好きなものをひとつ教えていただき、お届けいたしました。
誕生日の物語
*…芽吹き導くルベライトの赤い旋律…*
むせかえるような暑さとともに炎月期を迎えた深夜の街。
星の祈りと呼ばれる石を散りばめた時計塔が、特別な夜の特別な深夜零時の訪れを告げた。
その鐘の音は、赤い星々がちりばめられた夜空から降りてきたルベライトの旋律に寄り添うように奏でられ、艶やかに伸びやかに街中へと降り注ぐ。
天上の音楽ではじまる百年祭。
私の大切な水晶硝子の温室、星の種が眠るプランターにも、その祝福の音色は届いた。
リンリルリルリルと天の川のように流れる繊細な旋律に、星の種たちが共鳴する。
リンリルリルリルと愛らしく、夜で満ちたプランターから天へ応えるように歌い出す。
「え、どうして……」
それを見守っていた私の魂までもが揺れる、揺れる、揺れて――目の覚めるような鮮烈な音の光が私の内側で弾け、私の中で眠る『種』が芽吹く。
芽吹き、育ち、花開き――私からあふれるように咲いた透き通った光の花々が、私の視ている世界を変える。
かつて、育ての魔女の称号を持つ祖母が教えてくれた。
この街で生まれ育ったものは、誰もがその魂の内側に種を宿すと。
その『種』は、運命の旋律で満たされたとき、世界を超える力をもって導きの花を咲かせると。
でも開花に必要な時間も出会える確率も人それぞれで、その瞬間を迎えることなく朽ちる者もいる。
だからその時までただひたすらに魂が震える存在に従えと、魂の目指す声を聴けと、そう言われてきた。
祖母の言葉を忘れていたわけじゃない。
でも、私にその時が訪れるとはなぜか思えないまま、ただ祖母の庭と温室を継いでここまで来た。
なのに、今まさに、ルベライトの光をまとった花たちが、私からあふれ、咲き誇り、道を作る。
水晶硝子の温室から延びた花の道は、きらきらサラサラと音色を奏でて私を誘う。
ここではないどこかへ、果てしなく続く夜の向こう側へ。
炎月の煌めくような祝福の音色を宿した星の花を抱き、そこから生まれる音楽を届けるために、同じように魂に種を宿しながらも芽吹きを忘れ、朽ちかけている同胞を救うために。
足元を花びらたちがまるで星の瞬きのようにキラキラサラサラと流れる光景に愛おしさを募らせながら、私は最初の一歩を踏み出した。
了
*誕生石・誕生日花*
ルベライト:希望、愛情、思慮深さ
サファイア:誠実、成功、慈愛
スフェーン:永遠不滅、才能開花
ハイビスカス:常に新しい美
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