■マチネとソワレ
■作:大須賀めぐみ
どれほど作り込み、密度を上げ、魂を捧げて演じても、類稀な演技力を見せても、三ツ谷誠は亡くなった兄の代わりでしかない。
そんな誠はある日、タクシーを降りて自宅へ向かったはずが、そこには自分ではない女性が住んでいて。
しかもここでは死んだはずの兄・三ツ谷御幸が役者として喝采を浴びていると知る。
パラレルワールドの中では、誠は存在しない人間なわけです。
三ツ谷御幸の弟ではない、誰でもない自分として勝負できる、自分の人生を全部賭けてチャンスを掴もうと足掻く誠の熱量と狂気に圧倒され、そして魅せられてくんです。
もう、物語の密度が高い!
圧倒的な表現力と構成で、一度読み始めたら止まらなくなります。
そして一度最新話まで読み切ったら、再度はじめから、あるいはお気に入りの話から、読み返したくなります。
ハムレット、孤島の鬼、春琴抄といった古典・名作から、作者の過去作(伊坂幸太郎原作)、オリジナルと、扱われる題材も多彩。
舞台だけでなく、アニメや2.5次元、テレビドラマと、扱うジャンルも「演技」という括りの中で無限に魅せてくれる!
作品の中で作品が読める不思議な感覚。
漫画を読みながら、観劇もしている、この感覚がたまらないんです。
天才、鬼才、新人、中堅、ベテラン、あらゆる人たちの才能とか技術とかメソッドの書き分け、グラデーションの付け方もすごい。
演劇好きならなおのこと!
裏も面も高い解像度で触れられるのですよ。
役者の在り方や、表現へのこだわり、才能とは何か、演じるとはどういうことなのか、徹底的に掘り下げられていき、深淵を覗き込むように読み手として彼らの姿にのめり込んでいくんです。
人と人との驚くべき化学変化。
引き上げられ、引き摺り込まれ、引き寄せられ、上がり、落ち、世界が変わる。
登場人物たちひとりひとりに世界が見えるのもたまりません。
そして、誠を軸にした時、パラレルワールドだからこそ生まれる未知と既知、そして「戻るのか否か」や心残りといった心情描写にもハラハラとします。
スタッフや演者、タレント、他分野の才能ある人との繋がり方、その後の関係性も注目しちゃいます。
どれもこれも味わい深くて、この物語がどこに辿り着くのか楽しみで仕方がないです。
オススメ!
