■正しい世界の壊し方 最果ての果ての殺人
■作:彩藤アザミ
イバラに囲まれた村で過ごす少女・未明は、ある夜、村の掟を破り外の世界へと旅立つ決意をした。
けれどその冒険は一人の倒れた少年の拾うことで頓挫し、そして村の指導者の死により、思わぬ方向へと事態は動き出す。
真綿で包んだ箱庭のような、なんとも不可思議で閉ざされた世界観と、その掟やあり方を、未明という少女を通して触れる感覚が興味深い一冊。
未明は好奇心旺盛な12歳の少女であり、同時にあまりにも聡い。
閉じた優しい世界に、疑うことなく浸り続けられなかった彼女の特異性が終始、良い色を放ってるんですよね。
幻想的で幻惑されて、示された回答を受け取ったと思ったら消えるような中で、真実を求める突進力がいっそ痛々しくも頼もしい。
行動描写、仕草、視線、ちょっとした言動、散りばめられた世界のヒント、それらが「指導者の死」の前後で変質していく過程も、物語の構図として面白いです。
舞台装置的には、特殊設定ミステリーに分類されるはず。
見慣れない単語もあり、社会の仕組みも自分の日常とは違う。
ただ、ところどころで『人間』の業や欲が垣間見える描写が差し込まれるたびに、自分がよく知る社会でもあるんだと思わせてくれます。
全編を通じて、問われるものもあります。
善き人とは何か。
善く生きるとは何か。
『神様が見ているから』という教え(諭し?)は感覚はとても受け入れやすいからこそ、この感覚の使い方が絶妙な味わいになっているのがさすが。
指導者はなぜ死なねばならなかったのか。
そして、薔薇の外に広がる世界とは何か。
謎解きのパートにもうなります。
タイトルの美しさと共に。
やさしいけれど、どうしようもない隔たりも覚え、でもどこかで理想の楽園がこうして実現されたのだと信じたくなるような手触りもあり。
じんわりと切なく寂しい。
読後感をひと言で表すと、「寂寥」になりそうです。
でも重苦しさよりは優しさや前向きな光も感じられるので、不思議な味わいだなと、改めて思うのでした。
