■ 境界の扉ー日本カシドリの秘密ー

■作:エラリー・クイーン/訳:越前敏弥


長く日本で暮らしたミステリアスな女流作家カレン・リース。

彼女が自室で死体となって発見されたとき、唯一犯行が可能だったのは彼女の婚約者の娘エヴァだった。

無実を主張するエヴァのため、エラリーは真実を求めて調査を開始するがーー



クイーンの本格ミステリの傑作と聞き、さらにタイトルにの「境界の扉」という秀逸さに惹かれて手にとってみました。


読了して最初に感じたのは、タイトルの妙です。

本当にうまい!

続いて、この作品においては、密室の謎やトリック、誰が犯人なのかといった『ハウダニット』『フーダニット』よりも、『被疑者になったものとその周囲』の人間模様と心理過程を楽しむものなのかな、という印象を抱いた次第。


結婚を間近に控えた二組の男女が存在するけれど、悲劇を前にして、本当にそこに絆はあるのか、信頼はあるのか、という試験会場のように読めてしまいました。


絶対的な密室の謎を解き明かそうとすれば、想定外の事実がもたらされる。

無実の罪から逃れようと足掻けば足掻くほど、事態は深刻になり、袋小路へと追い詰められていく。


その過程とエラリーの推理展開はなかなかに面白く、読み手がおおよそ想定する「解答」に触れて、それを却下していくのも、ミステリー好きとしては嬉しい演出でした。


その上で、やっぱり目がいき、意識が向くのは、登場人物たちの人間関係、特に信頼関係や愛の所在、表明手段と、その受け取り方、受け止め方なわけです。


エラリー自身も探偵として、父親であるクイーン警視(警察側)と対立する親子喧嘩が勃発してます。


誰がどの立場で何を大切にするのか、その大切にする基準は何によって優先順位が変わるのか。

有事の際に人はどう行動するか。

信頼し、未来を共に歩みたいと思える信頼すべき相手は誰か。

そんなところにこそ注目してしまう構成でした。


面白かったです!


なお、『日本』に関しては、いかんせん自分が日本人であるからこそ気になるところもありますが、そこはもう、訳者さんがすごく頑張ってくださったのだろうなと思うなどしてます。