■名探偵の顔が良い―天草茅夢のジャンクな事件簿―
■作:森晶麿
職場で不可解な事件に巻き込まれた潤子は、ストレス発散を兼ねたジャンク飯屋でまさかの運命の出会いを果たす。
タイトルの通り、『推しの顔が良い!』と心の中でめっちゃ叫ぶ潤子の姿が見えるような連作短編集。
とびきり顔が良く、演技力も高い推しこと天草茅夢が、まさかのジャンク飯好き。
この設定によって、偶然のような奇跡の出会いと再会がうまいこと連動してて楽しくなっちゃいます。
しかも、推しとのお食事時間の話のネタは本格ミステリ要素てんこ盛りの事件。
密室と見立てと毒殺の欲張りセットや、双生児がやたらと出てくるお腹いっぱいセット、消失とアリバイの旨みセット、などなど。
4つの事件ひとつひとつが過剰演出なわけです。
なのに、読んでいるだけでお腹が空いてしまうカロリー爆弾ことジャンク飯をめいっぱい頬張りながら、顔の良すぎる俳優が名探偵さながらに展開する推理は大変スピーディー!
厚くないんです、この小説。
設定てんこ盛りなのに、美味しそうなジャンク飯に意識を持ってかれ、推しに悶える順子の姿と推しとの距離感に全力で共感して、気づいたら名探偵の推理で謎は解けちゃってるんです。
顔も良くて、頭も良くて、なにより「自分」の取り扱い方(魅せ方)を熟知してる天草茅夢が面白い。
彼といる潤子がまた面白い。
変な湿度がなくてふたりがいい塩梅の距離感で謎の疾走感のようなものを覚える、不思議読書体験。
切断島の殺戮理論でも感じましたが、この作家さんの人間関係の距離感と会話のテンポと感情の置き方が絶妙で好みです。
軽やかに楽しめる一冊でした。
