■冬期限定ボンボンショコラ事件
■作:米澤穂信
小市民を志す小鳩くんは受験を控えたその日、ひき逃げに遭ってしまう。
朦朧とした意識の中、共に小市民の星を目指す小山内さんから、「犯人を許さない」というメッセージが残されていてーー
ひき逃げ事件を軸とした、中学時代と高校時代、過去と現在が交錯するシリーズ最終作。
小鳩くんと小山内さんの出会いのきっかけとなった事件とが同時に語られる時間軸の構成は巧みで、ひたすらに読み始めたら止まらなくなります。
ひき逃げによって入院生活を余儀なくされた小鳩くんは、語り手であり、安楽椅子探偵であり、ある意味においては探偵助手となっています。
小山内さんとの関係が唯一無二として残る構成なのもさすが。
さらに、米澤穂信の心理描写は、言語化されたものはもちろん、行間にまで、もどかしくなるほどの切ない痛みがひそんでるんです。
あのときどんな想いを、と、想像してしまう、想像できてしまう。
小鳩くんの内面の掘り下げにたいする描写が丁寧であればあるほどに、読み手の心の弱い部分がきゅうと締めつけられていくんです。
抉られたりするような痛みではないけれど、じんわりと後に残るような感覚で。
これが米澤穂信なんだと、待ち続けた小市民シリーズのラストシーズン、2人の高校生活の最後を見届けることができました。