■コーヒーが冷めないうちに

■川口俊和作


その喫茶店には、「過去に戻れる」席があるらしい。

ただし、過去に戻るためにはいくつものルールを守る必要があり、そして、過去はどんなことをしても変えることはできない。

それでも戻りたいと願った4人の少し不思議な物語。



最近は映画になった作品の原作を読んでいるという本好きな友人からのおすすめ。

あまりにもプレゼンがうまくて、ふだんなら読まないジャンルに手を伸ばしてみました。


そして、うっかりバスの中で読み、涙が止まらなくなって慌ててページを閉じるという体験をしてしまいました。

油断しました。

4話のオムニバス形式で、1話目を読み終えた時にはまだ明るめの軽やかさがあったんです。

でも、2話目以降はダメです。

こんなに切なくて愛しくて胸にくるとは思ってなくて、不意打ちで涙腺崩壊です。


この物語は、過去に戻ることができる不思議な喫茶店のお話。

でも、過去に戻ってどれだけ努力しても起きたことは変えられない。


読み終えて感じるのは、厳格に定められたこのルールがとても意味のあるものだということ。


事実は事実。

起きたことは変えられない。

でも意味付けを変えることはできる。

この物語は、『リフレーミング』の物語なんだと思いました。


「どうせ〇〇なんでしょ、私にはわかる」

「あの人は絶対〇〇だって思ってる」


そんなセリフを見ながら、これって自分も日常的に言ってるしやってるよね、と思い返してました。

相手の想い、本心、本音、それを想像してしまうけれど、確認することを怠ればすれ違う。


自分の中の「どうせこうなんだ」を横に置いて、相手の言葉に耳を傾け、時に尋ねることができたら?

起きたことは変えられなくても、捉え方が変わることで未来は変わるかもしれない。


登場人物に感情移入してしまい、そして、希望が見える物語に心が揺れ。

面白い作品に出会えました。

シリーズ展開しているので、これから追いかけたい所存です。