◆オーダーメイド物語
【タロットカードの物語】
▶︎ご依頼主:さだはる様
現在向き合っていることがあり、物語にキッカケをもらいたいというご依頼でした。
3つの質問の回答をもとに引いたタロットカードが示したのは『女教皇』でした。
▶︎物語
タロットカードで綴る物語
*…乞い、求め、道をひらく、その書の名は…*
「どうしてこんなところに……」
天地をひっくり返すような酷い嵐だった。
荒地に残された廃協会でソレをやり過ごした私は、むかえた朝陽の中で突如現れたものに言葉を失う。
ひとつは、果てなき天上へと延びる水晶の階段。
もうひとつは、地の果てへと降りていく黒曜石の階段。
どちらもが微かに明滅する美しい光を孕みながら、その先を見ることは叶わない。
ただ、進むことで位相が一段階以上変わることだけは察せられた。
私はギュッと、師より託された魔導書を抱きしめる。
『心は決まった?』
相棒たる精霊が、するりと書から抜け出し、こちらを覗きこむ。
「……まだ、ちょっと」
『ふうん? ……ところで、あんたの隣には誰がいるの?』
あなたがいる、と視線で答えれば、
『で、あんたが持ってるソレは何? あの方々と繋がってること、忘れてないわよね?』
彼女の指先からこぼれる光が、私の魔導書をなぞり、歌うように冒頭の句を暗唱する。
『“知識を、経験を、先人の知恵を、導となる助言を、自ら乞い、求め、手を伸ばして行動したなら”』
未知は既知へ。
想定外は予測範囲内へ。
ソレがおそれと不安に手綱をつけて飼い慣らす術だと、そう囁く師の声が彼女に重なる。
歩むと決めたのは自分。
己の選択に責を負うのも自分。
でも、その選択に至る過程でまで“独り”である必要はないのだと、私は確かに教わった。
『ま、どっちを選んだって無駄になんてならないし、させないんだけど?』
「ほんと、あなたっていい相棒だわ」
『あたしを誰だと思ってんのよ』
「ほんとね。直感より違和感を大事にしろって師匠の言葉も思い出せたし。いけそうかも」
ふたつに分たれた階段の前で、私は真っ直ぐに天を仰いだ。
道を開くためのすべを、私はもう知っている。
了
◆タロットカード:Ⅱ女教皇
キーワード:叡智、直感、決断、夢、学び、解決の糸口
Copyright RIN
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◆さだはる様
まさに転機に立たれているというさだはる様。
タロットカードの物語に背中を押してもらった、この物語の続きも読みたくなる、ワクワクさせてもらったという嬉しいお言葉をいただきました。
少しでも物語のチカラがお届けできたのだとしたらもの書き冥利に尽きます。