■首無の如き祟るもの
■著:三津田信三
奥多摩の代々続く旧家にて、当主長男・長寿郎の婚約者を決める儀式中に起きた悍ましい事件。
密室で発見された首なし死体を前に、淡首様の祟りではと恐れるものたち。
過去の儀式で起きた長寿郎の双子の片割れの死も絡み、第ニ第三の犠牲者を産みながら、事件は一層複雑さを増していく。
はたして、事件はどこに帰着するのか?
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SNSのオススメミステリのひとつに挙げられていた密室もの。
昭和初期を主な舞台とし、ホラーとミステリが融合された、美しくも悍ましく、ざわりとした質感の物語。
書き手が雑誌に連載するというテイストで物語は進行していくのですが、この構成が実に面白いのです。
作者の一人称ではなく、体験談風というわけでもなく、物語の視点と照準を一定の登場人物に合わせながらも完全なる三人称で綴る。
祟りを恐れる村の中で、首なし死体が密室の中で生まれる不可解さ。
この舞台装置が実に怪奇的で、章が進むごとに「祟り」としか思えず、人の手の介入を拒んでいるとすら思えてくる不可能性が際立っていくんです。
なのに、この物語はロジックによって着地してみせる。
このカタルシスと余韻がたまらないのです。
漫然と読んでいては、張り巡らされた伏線のことごとくを見落としてしまいます。
大小さまざまな違和感も、ひとたび登場人物と視線を同じくすれば、たちまち怪異の中に飲まれてしまい、真相には永遠に辿り着けなくなってしまうのです。
謎は解かれるためにあるのだと、解体されていく過程の鮮やかに驚かされ、それでもなおホラー的な質感を保ち続けるところに感銘を受け。
絶妙な読後感を味わえる、実に魅力的な一冊でした。