いわゆる老年期病棟や終末期の現場にいると、さまざまな患者さんと患者家族さんにお会いします。


すでにご自身で意思表示が難しいご本人様を前に、ご家族は治療や今後のこと、時には延命に関しての選択を迫られます。


治療を行う上でキーパーソンとなる方(患者さんの治療の責任者であり代弁者)が、その立場に苦しむことも、起こりえます。


これまで十分話し合ってきたのなら問題はないんです。

家族で支え合い、選択し、その選択を悔いなしと思えるのならいいのです。


でも、家族関係がそこを難しくしてしまうのですよね。


元々の関係性が良く、病気によっても変わらず良い関係だからこそ、現状を受け入れられないこともあるかもしれません。

その思いごと、医療者側は全力でサポートします。

『自分がしたいことではなく、相手(患者さん本人)がどうして欲しいか』の視点でお話しすることもあります。


元々の関係性が悪く、でも病気をきっかけに歩み寄りできる範囲で協力したいと思えたのなら、それも応援いたします。


でも、


・関係性は良かったけれど,病気による疲労などから一時的に関係が悪化している

・元々の関係性が悪く、現時点でも修復には至らないためにできる限り関わりたくないのに,病院から関わりを求められて辛い

・患者さんとキーパーソンの関係は良くても、それ以外の家族からの圧力が辛い


こんな時には、ムリに全てを自分ひとりで背負わなくて良いんです。

自分の『心と健康』を大事にして欲しいと思います。


介護がしんどいのなら、病院や施設を頼って、物理的に距離を置いていいんです。

毎日お見舞いに行けなくてもいいんです。

他の家族(親戚)に関わってほしくないのなら、そんな自分の気持ちを無視せず、医療側に相談していいんです。

経済的な不安や制度なら、(調べても分かりにくい分)病院の医療相談室を全力活用していいんです。


『家族なんだから〜しなければならない』という呪縛から、一歩ずつでも少しでも抜け出せるように。


そして医療者は、医師であれ看護師であれ,リハビリや相談室、すべての職種が、患者家族の心の動きを知り、信頼関係を築ける関わりを意識していきたいと思うのです。