◆オーダーメイド物語
【誕生日の物語】
▶︎ご依頼主:中上麗華さま
似顔絵屋DosancoSlalaProを経営される中上様より、誕生日の物語のご依頼をいただきました。
▶︎物語
誕生日の物語
*…いつかこの祈りが夜明けを運ぶまで…*
呪われ穢れたこの最果ての地にありながら、那由多を越えて咲きほこる黒曜のソレイユ。
遥か昔――堕ちた最愛の神へ己が魂を捧げ、一切の穢れを引き受け護った姫巫女の化身たる花々は、天上の牢獄に繋がれた相手を想って空を仰ぎ、虹の光をすべらせ煌めく。
「炎月の奉納祭まで、もうあと少しね」
私は家族と共に、迷路じみた花々の間を巡り、ひときわ艶やかに輝く花をカゴに摘んでいった。
祝福とともにソレイユの欠片を研いで樽で醸造すれば、透き通った芳醇な味と香りをともない、罪を清め、血から邪を祓う神酒となる。
「今年も“神の雫”に成ってくれるかな」
「ぼくらのも、神様と姫様に受け取ってもらえるかな?」
こぼれた子供たちの呟きをさらう風に、かすかな不安の香りが混じる。
「成ると信じて真摯に向き合うだけだ」
「それに、炎の月の祝福が“力”を貸してくださるんだから大丈夫よ」
この地を管理できる者も、ソレイユから酒を作れる職人も、今はもう私達しか残っていないけれど、それでもただ向き合い、捧げ続けるのだ。
「いつか姫様と神様の魂の呪が浄化され」
「いつかこの花が黒曜から紅玉へ変わるまで、だよね?」
「そうよ」
いつかこの日々の先に、終焉の運命すらも浄化して、阿僧祇の時を超えて夜明けがくるのだと信じて。
「ソレが彼女と堕ちた神の契りから生まれ、魂を分かつ私たちの、誓いであり、試練であり、課せられた愛の証明でもあるから、ね」
そうして私は微笑み、愛しい子供たちのつむじにキスをひとつ落とした。
了
*誕生石・誕生日花*
ヒマワリ:敬慕、私はあなただけを見つめる
アサガオ: はかない恋、固い絆、愛情
オブシディアン:不思議、直観、守護
アメトリン:ベストパートナー、調和
ルビー:卓越者、不滅の愛
Copyright RIN
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▶︎中上麗華さま
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アーティストさんにとってもたのもしい存在でいらっしゃいます。