*タロットカードで綴る500文字の物語


Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画第2弾。


タロットカードは大アルカナ(22)をモチーフにしています。


空・海・陸のうちで好きなものをひとつと、

こちらが提示した数字から2つ選んでもらい、

それをもとに物語のカードを引きました。


11編を、ご依頼主様の許可をいただき順に公開してゆきます。


 タロットカードで綴る物語 #3吊られた男

 

ミルクのようにとろりとした雲が、足下でわずかに波立ち、そのたびに弾ける甘やかな光の泡沫が一層儚げで美しい。

これは夢。

これは幻。

そう自覚できるほどに現実感の薄い景色の中を私は進む。

 

鏡のような空のもと、果てしなく広がる雲海の間に間に、目指すのは、スラリと枝葉を伸ばす一本の樹木だった。

かつて天使だったものが姿を変えてまどろんでいるのだと聴いたのは、さて、いつのことだったのか。

しかし、記憶を頼りに目指したそこには、なぜか、まるで果実のようにひとりの男が逆さまに揺れていた。

かつて下界で見た振り子時計のように、ゆらりゆらりと。

彼はゆらゆらと揺れながら、その視線を天に、地に、過去に、未来に向けていく。

そのしなやかな指先は、旋律をなぞるようになめらかな動きを見せてこちらの視線を奪い、言葉を突き付ける。

 

『ほら、気づいてるんだろ?』

『行くべき道が、あんたにはもう見えてるんだろ?』

 

真っ直ぐに私を捉えてひたりと止まった指先へ、その強いまざなしへ、「全くもってそのとおりだ」と、いっそ豪快なくらいに笑って応え。

 

私はまどろみの繭から、自らの意志で孵ってみせた。

 

 

 

◆タロットカード:吊られた男

◇キーワード:直感での行動、希望、成長のための試練

 

Copyright RIN


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思わぬシンクロに驚いていただけたり、「癒された」「すっきりした」と言っていただけたり。

タロットのなせるわざなのか、どこか暗示的な物語が多い印象となりました。



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