*推しの概念モチーフ3つで綴る500文字の物語
Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画でした。
推しの名前や指定の概念モチーフは伏せた上で、企画で綴らせていただいた8編を、ご依頼主様の許可をいただき順に公開してゆきます。
モチーフで綴る物語 #8
孔雀の羽を模した翠光が、館の隠し通路からのびた地下道をうねる。
一族の口伝のとおり、ソレは厳重に鎖と呪布で封じされた青銅の扉へと私を導いてみせた。
禁域とされたその空間には、肌を裂くほどの拒絶の冷気が満ちる。
けれど、ここで屈するわけにはいかない。
残された時間は少なくとも、当代の墓守は私なのだ。
「私はあなたを解放する。そのためにここへ来たの」
血に塗れた手を扉にかければ、紫苑の火花を散らして封印は爆ぜ。
そして、私は目の前の光景に息を呑む。
魂を絡めとる、月の雫と天使の涙を混ぜて結晶化したかのような瞳がひたりとこちらを捉えていた。
――今更解放たぁ、どういう風の吹き回しだ
神魔の落胤"白狼"の、獰猛さと怜悧さとを取り込んでひらめく白銀の毛並みが、風を纏ってさわりと揺れる。
「……これは、一族最後の生き残りとしての責務よ」
神狼を呪で縛り、死を振り撒いた墓守の咎は、私の代で贖うと決めていた。
それが今日なのだと、この命を糧に自由をと、そう見据えて告げてみせれば、白狼は愉悦を孕んで口元を大きく歪める。
――なるほど。お前に憑けば退屈はしねぇかもな
だから死なせない、仇討を果たしてみせろと、そう微笑った意味を理解できぬまま、私は己の意識を手放した。
了
Copyright RIN
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『あなたの考える推しを構成する概念モチーフ(イメージカラーや属性、小物類など)を3つ』あげていただき、その概念で構成された物語を綴るという企画でした。
二次創作ではなく、あくまでもモチーフ(概念)反映の一次創作。
そして、概念として表すモチーフも、ご依頼主さま独自のものでオッケーとしてみました。
ただひたすら書いていて楽しかったです。
実際にオーダーメイド物語としてリリースにするには、『解釈違い地雷踏み抜き回避』のためにも、もう少しいじる必要があるのですが、頑張って調整してみる所存です。