世界各国の死刑囚が集められた特殊な監獄ーー通称終末監獄。
この特殊な監獄において、次々と起こる不可思議で不可解な事件たち。
その謎に挑むのは、卓越した思考力を持つ老囚と、なぜか彼に指名された青年だった。
《収録》
・魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室
・英雄チェン・ウェイツの失踪
・監察官ジェマイヤ・カーレッドの韜晦
・墓守ラクパ・ギャルポの誉れ
・女囚マリア・スコフィールドの懐胎
・確定囚アラン・イシダの真実
ミステリ小説の新規開拓として色々検索した中で出会った一冊。
初めての作家さんなのですが、軽妙かつ一気に読み進めてしまう構成が印象的でした。
監獄を舞台とした連作短編は、縦軸に探偵役の老囚と助手の青年囚を置き、横軸に不可解な六つの事件を配して、読み手を特殊な物語世界に引き込んでいくのです。
死刑囚となったものたちの背景や人間関係、この監獄ならではの設定と仕掛けも興味深い。
起きた事件の動機や方法が、用意された舞台装置に意味をもたらしているわけで、「なぜここでこのタイミングで起こったのか」という問いへの答えに納得感が出てくるという。
全編にわたって大小さまざまな謎が散りばめられ、ラストに向けて解かれていく過程と,そのタイミングも絶妙。
じわりと浸透するような、不思議な読後感とともに、先入観なく読み進めてほしい一冊となりました。