【オーダーメイド物語】
Facebookで募集しておりました、オーダーメイド物語モニター。
ご依頼主様よりアンケートの回答をいただきました、第7弾!
ありがとうございます(五体投地)
今回お届けした物語は、
『140文字企画の続きをおまかせで』
140文字企画の続きを、と言っていただけるのはすごく嬉しいです。
今回の物語では、鮮やかな色彩と広がる輪をイメージしておりました。
そしてお届けした物語からたくさんのものを受け取ってくださっていて、物書き冥利につきます。
*依頼主: 煌幸希子さま*
①オーダーメイド物語を頼まれたきっかけはなんですか?
140字の続きをぜひ読みたいと思い、
ちょうどお誕生日なので自分へのプレゼントと
思ってお願いしました。
②物語をうけとってみていかがでしたか?
なんて清々しくてきらびやかな世界!
読んていて浮かぶ映像がきれいなのはもちろん、
内面的な、私が進む道みたいなものが
予言されているような気がしました。
タイトルの「約束の地」に行く旅、
物理的な移動というイメージではないにしても
新たな自分への学びや魂の旅がはじまったばかり。
ワクワクしました。
③どんな方に勧めたいと思いますか?
どんな方も喜ばれると思います。
誰かにプレゼントにしたいです。
(贈られる方がSNSやっていないと難しいのかもしれませんが。)
自分の進む道がわからない人や
今やっていることに自信がない人は
やるべきことややりたいことがわかる、
一種のセラピーになるかもしれないですね。
*物語*
…*…麗しの神子、約束の地…*…
極彩色の光が降り注ぐ中、極彩色の鳥たちが極彩色の花々を咥え、華やかな音楽の中に舞う。
月と日と果実の神が間も無くこの島へと降臨する。
滴るような鮮紅色の石を握り、私は夕陽に染めた衣装を纏い、祭壇へ向かう。
ついに約束の時は来た。
この石を彼の方へ還すためだけに、私は《踊り巫女》となったのだ。
瞳を閉じれば、ふるりと過去の記憶が巡る。
かつて、私はたったひとりきり、永劫とも呼べる時を旅していた。
世界が終わり、世界が始まる、そのために得るべきものを求めて、遠く遠く果てしなく、渇望し祈望したのは《生命の音色》。
あらゆる世界を包む、あらゆる存在を癒し育むものが、私には必要だったのだ。
――ああ、誰かが私をよんでいる
呼んでいる。
招ばれている。
喚ばれ求められている。
漣の声に導かれるように辿り着いたのは、ブルージェードの波が寄せては返す《最果ての島》だった。
水に浸かりながらも、過去の栄華を湛える銀月石の階段が長く緩く続いている。
その先には、朽ちた宮殿がひっそりと佇んでいた。
住まう者も祀るものも敬うものも失われて久しいのだろう。
青みがかった鈍色に沈む壁には亀裂が走り、這う緑の蔦により、そこはまるで絡め取られた鳥籠のように切なく映る。
どうしようもなく胸の奥が疼くのを感じながら、それでもゆるりそろりと、時折水に足を浸しながらも中へと踏み入っていく。
そして、私は息を吞んだ。
――我は、月と日と果実を統べるもの也
崩れた箇所から射しこむ光によって、砕けて水に沈んだステンドグラスが、歪な床に、あるいは壁に、ありとあらゆるところに美しい彩をばら撒いていた。
しかもその光たちは、吹き抜けのホールから上階へとつながる大階段の先、壁から天井へとむけて描き出された《絵画》を、朽ちた世界で色褪せることなく掲げられた、古に伝え聞く《失われた神》の姿なのだと知らしめる。
――汝、我が巫女となれ
――さすれば《豊穣》を約束しよう
この身に惜しみなく降り注ぐ祝福の音色と福音に、私の魂は打ち震えた。
『御心のままに。わたくしはあなたさまの踊り巫女となりましょう』
私は己のうちに眠る力をなぞり、一歩一歩を進む足で、緩やかに、やがて軽やかに、ステップを踏む。
指先に宿る、差し伸べる、求める、捧げる。
巡り巡る想いのチカラがステンドグラスの光がともに踊る。
その光はやがて長い尾の色鮮やかな鳥へと姿を変え、より自由に舞い上がっていく。
――ソレが汝の導きとなろう
請われるまま望まれるままに、神から賜る音楽に祈りを重ね、神へと捧げる祈りに乗せて、世界が生まれる時を願いながら、かの方の祀られた宮殿を探し求めては踊りを捧げた。
旅路の中で、私には魂を分けた姉妹たちが生まれ、それぞれの旅路に祝福を贈りあい、互いを高め、奉納の舞は、私ひとりでは到底なしえなかったであろう大きな広がりを見せていく。
いつしか赤い小鳥もまた、宮殿を巡り行く中で少しずつその姿を変じていった。
翼は色彩を増して煌びやかに、長い尾はいくつもに分かれ装飾性を得、その身はやがて私よりも大きくなり、嘴から奏でる旋律は夢幻の麗しさを湛えるに至る。
鮮紅色に輝く鳥とともに満ちていく美しいチカラは、月と日と果実の神が与える恩恵に他ならない。
そうしてふと気づけば、この手のなかに、滴るほどに艶やかな鮮紅色の石が収まっていた。
覗き込めば、中では月と日の光が渦を生み、とろりとした漣が寄せては返しているのが見える。
月と日と果実の神が与えてくださった加護が、この瞬間、《生命の音色》となり、ここに新たなる世界が産声をあげたのだ。
――我が愛しき神子よ
地上へと降りてきた荘厳にして優美なる《音色》により、私は過去の記憶から顔を上げる。
極彩色の花々が咲き誇り、極彩色の鳥たちが歌う、極彩色の光にひらめく海のまにまに、私は祭壇から夕陽に染まる衣装をひるがえし、大きくステップを踏んだ。
掲げた鮮紅色の石は神の鳥の姿と成って舞い上がり、大切な姉妹たちをも誘って、この地へと降臨なされた我が神へと魂の色をのせた群舞を捧げる。
そうして世界は、あふれんばかりの色彩を伴い、神の祝福に満たされていく――
了
Copyright 物語ライターりん

