【オーダーメイド物語】

Facebookで募集しておりましたオーダーメイド物語のモニター。

ご依頼主様よりアンケートの回答をいただきました、第5弾!

嬉しいお言葉をありがとうございますーー(五体投地)


今回お届けした物語は、


140文字企画の続きをおまかせで』


おまかせ第二弾です。

詰め込みました。

全力で映像美を追求しながら、ご依頼主様のそれはもう美しい世界観イメージを全力で物語化させていただいた所存。



*依頼主:坪内薫さま*


①オーダーメイド物語を頼まれたきっかけはなんですか?


モニターで書いていただいた文章の世界が美しすぎて、その先に手を伸ばしたくなったのでお願いしました。


②物語をうけとってみていかがでしたか?


こんなに本能を揺さぶる文章はいつぶりだろうという位の衝動がありました。


脳内にリアルに描き出される映像は私の何かに響きを与え、少し押し隠していたものにそっと心地よさを与えてくれたような感じです。


ずっとほしかったなにかを受け取れました。


③どんな方に勧めたいと思いますか?


自分は理解してもらいにくい感性がある、わかってもらえる人が少ないという方へ


*物語*


…*…星々の果ての旋律…*…

 

あまねく星々の只中で、透明な夜を結晶化させたようなその方の姿に息を呑む。

心臓を、いや魂を射抜かれるとはこのことか。

全身が雷に打たれ痺れたかのように動かない。

声を失い、言葉をなくし、木偶となった私に対し、彼の方は、艶然たる笑みとともに問う。

 

『望みは何か』

 

無色の光が旋律をなすように、魂へと直接響く声だ。

「救い、を……私の、世界に、……愛するものの上に、どうか、……どうか」

声は震え、言葉がまともな形をなさぬまま、私は滂沱の涙を流しながらも跪き、請う。

真理へと至る扉を背に、彼の方はもう一度笑んでくださった。

そうして、夜の雫を纏う月のような美しい手が、私へと差し伸べられる。

もはや立ちあがり方すら忘れかけていた私には、ソレに応えることすらままならない。

だが、彼の方はほんの僅かに笑みを深めると、その指先で動けぬ私の輪郭をなぞった。

 

刹那。

 

歪み、ひび割れ、砕ける寸前であったこの身に、祝福のチカラ》が芽吹くのを感じた。

 とおの昔に失われ、久しく感じることなかった、内からあふれる生命の息吹だ。

「……私に、なにが……」

驚愕とともに絞り出した問いはしかし、突如、動き出した星々によって掻き消される。

我々を取り巻くかの如く、銀青色の光の尾を引きながら、時にぶつかり、時に弾け、星はどこまでも舞い上がっていく

まばゆいその光景は、彼の方の指揮下で行われているのだろう。

わずかな溜息すらも喉から漏れることはなく、ただ、その光景に目を見張ることしかできなかった。

それはやがて、螺旋階段へと収束していく。

天も地も決めず、夢幻にして無限に続く螺鈿細工にも似た煌めき。

 戸惑い、視線を巡らせるばかりだったが、彼の方は流れるような所作で私の腕をすくい取り、立ち直らせ、そうして上とも下ともわからぬ階段へと導いた。

 

一段一段を踏みしめるように進むたび、光の雫が足元で小さく跳ねては水面のように星を抱いた波紋げる

そこに言葉はなく、けれど旋律はあった。

彼の方の存在がもたらす、その完全なる世界観ともいうべき音色に共鳴を起こしているのだろう。

私の中の崩れた魂の音階もまた、ゆるやかに元の有り様を取り戻していった

耳を傾け。

知らず、口ずさみ。

眩暈を起こしそうなほどに、彼の方が奏でる世界の音が私をすっかりと包み込む頃、螺旋階段はるりと伸び回廊となり、透き通る夜空を模したロングギャラリーへと変じていた。

「ああ、なんと、これは……」

 大きく、小さく、手のひらから身の丈を超えるものまで、重力という概念から遠く、各々が中空に静止する額縁たちへと、彼の方は視線を向けている。

審美的な眼差しに慈しみを孕み、複雑に彩られた彼の方のその横顔に、畏れ多くも見惚れてしまった

 だから気づくのが遅れたのだ。

 幽玄水晶の顔料でも使っているのだろうと、ゆえに奥行あるリアルな筆致になるのだろうと、そう判断したものが、本当には絵画などではないのだと気づくのに那由他にも等しい時をかけてしまった

 柔らかな布に包まれ眠る赤子、光射す庭に立つ幼子、手を取り合い見つめ合う恋人たち、膝をついて祈りを捧げる親子、そして打ちひしがれ倒れ伏すものたち

 数多の悲喜劇が星々の痛みの中に飲まれてゆく姿までを見て、ようやくだ。

ようやく、そこに描き出されたもの映し出されたものたち『私』の記憶に他ならないのだ知ったのだ。

 

「……あぁ、私は、いまこそ私は……」

 

そうして、ここにきて、己が何者であり、何を求め、何をなすべきであったのかを、己から零れ落ちたすべての軌跡を思い出す。

涙が、再び双眸からあふれ出した。

 それは、頬を伝い、の雫へと変わる。

 星の雫は足元に落ちて、りんりると繊細な音色を響かせながら消えていく。

 その音色へ合わせるように、月光色にも似た美しい彼の方の指先が、私の魂の輪郭をなぞられて。

 そのたびに新たなる光の音が生まれ、音は連なり、天上の美を湛える旋律となって私を取り巻き、たおやかに、麗しく、舞い上がる。

 

 その音が波のように引いていくのを追いかけるうち――

 

 気づくと私は、愛すべき己が支配する地に立っていた。

 崇高なる彼の方の存在、星々からなる透明な夜のすべては夢であったのかと思えるほどに跡形もなく、私はただ、《私の世界に立っていた。

だが、この身に注がれた祝福の旋律が、取り戻されたわが身のチカラが、この地を癒し始めていることがわかるから。

 真理の扉の前に立つ彼の方へと深く祈りを捧げ、私は愛しき者たちのための一歩を踏み出した。

 

 


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