関西は秋晴れの気持ちの良い日が続きますね。
先日はとても嬉しい事がありました。
大学生になったKちゃんがコンクール本選を通過して
全国大会に進出する事となりました。
高校生までの部と違い、大学生の部では年齢、学年毎に大きな差がつきます。
大学生1年生と4年生では歌える曲目も変わりますし、
楽器となる肉体、声帯の成熟度も全く違います。
その中で全国大会に、しかも彼女は現在音大生としての専門教育を
受けていないにも関わらずよく頑張りました。
一般大学の一年生が音大の4年生や院生に混じって
本選を勝ち抜いたのは大したものです。
昨年もこのコンクールを受験していて、圧倒的な実力があったにも関わらず
練習量の不足や楽譜の読み込みの甘さで5点近く取りこぼして
進出できなかったのは痛恨の極みでした。
今年はとても難しい状況からよく頑張ってくれたと思います。
チェコ語でオペラアリアを歌う、これだけでもハードルは高かったのですが
しっかりした土台に乗って朗々とした息に響きを乗せて
明瞭な発音、音楽をどれほど理解しているのか
こういった点を問われましたが、よく勉強していたと思います。
もちろんまだまだ勉強して直して行かないといけない点は山のようにあるのですが…
今回、審査員としても急遽要請を受けて入る事になったのですが
全体に気になったのが、
下半身と背中の筋肉をしっかり使って息を吐けている人が少なかった。
響きがとても平板で、胸が固く喉を閉めて歌っている方が多かったです。
ですので常にf、ff でがなり立てるようになり
p、ppでの繊細な表現ができなくなっていました。
フィジカル面での強化や呼吸法、ハミングなどの
基礎の練習が足りないのかもしれません。
こういった点は自分の生徒であるとかに関わらず、
厳しめに指摘させて頂きました。
また、声は年齢によるものがとても大きいので
同じように歌っても年齢の高い方には厳しめに採点させて頂きました。
年齢が上がれば筋肉が熟れで歌の幅は広がって行く筈ですので。
そんな訳で短い審査時間の中で講評、次に向けて練習して欲しいポイントなど
山のように書いたので手が痛くなってしまいましたwww
コンクールというものは現時点での完成度を見せるものですので、
結果に拘ることなく
次に成長するための通過点だと考え、前向きに練習して欲しいと思います。
もう一人初めてコンクールに臨んだUちゃんも
望む結果ではなかったと思いますが
ここから何を学び成長してくれるのか楽しみです。
…と、ここまでが良いお話し。
反対に頭を抱えたくなる生徒さんのお話しも。
コロナ禍を理由に春から音信不通状態になっていた中学生のMさん。
今春音楽学校を受験予定でした。
しかし練習もできていない、そもそも基礎を今まで何度注意してもやって来ない。
自粛期間中も他の受験生の皆さんはオンラインなど、できる事をやって来ました。
このまま秋を過ぎてもレッスンに来る気配もない、でも受験はしたい。
…受験に関する指導はお断りさせて頂きました。
音校受験はそんなに甘いものではないからです。
基礎をきちんとやって次年度に受験するくらいでないと
審査員の先生方に悪印象を残すだけです。
…ここでまた音信不通。
結果、彼女は先生が私をクビにした、私を理解してくれないと
一方的なLINEを送って来て教室を退会しました。
また親御さんにも手続き等ありますので何度も連絡させて頂きましたが、
こちらも音信不通です。
心身ともに未成熟な未成年の生徒さんが
感情に任せて暴走するのはある程度仕方ないとしても
保護者の方にはそこをきちんとフォローして頂きたいと思います。
未成年のお子さんと同じレベルで物事を投げ出されるようでは
どんな先生でも受け入れかねます。
今回の不手際はむしろ親御さんの責任でもあると思います。
決して生徒さんを晒し者にしたいわけではありません。
コミュニケーションを取れない生徒さんが増えています。
先日も教員志望の社会人の方が試験終了後音信不通になりました。
この方はお月謝の未払いもあります。
常識がなくて子供を指導する教員が務まるのかと悲しくなりました。
Mさんは普段のレッスンから練習していない事などを指摘してもすぐ黙り込む、泣き出す
そういった事が多く注意をしていました。
自分では一生懸命練習をして来たと。
しかしそれはこちらが提示した練習方法や練習量ではありません。
わからないのならわからないと、なぜわからないのかを
きちんと意思表示する事が大切です。
長くレッスンでお付き合いしている先生との間でならば、理解しようと努力もします。
しかし試験の数分しかお会いできない先生方に、
実は自分は表に感情を出して表現するのが苦手だけれど
自分の感情の襞の奥深くまで察して理解して採点して欲しい！
このような思いは伝わりません。
本番の舞台で数分しか会えない相手に全てを伝える事。
これが試験です。
どんなにしんどい事があっても最大限の笑顔で答えられるようにする。
笑顔も筋肉ですからトレーニングなのです。
どんな事を尋ねられても頭と心を柔軟にして明るく自分らしさを出して即座に答えられる。
全て訓練なのです。
歌や踊りの技術は当たり前です。
舞台人としての心構え、姿勢を問われています。
長く付き合っている先生相手にすらコミュニケーションが取れないようでは困ります。
そして礼儀、最低限のマナーが守れないのであれば
受験そのものを諦めないといけません。
音楽学校のよく知られたモットーに
「清く、正しく、美しく」があります。
その後に「そして、朗らかに」と続くのです。
「そして、朗らかに」何と素晴らしい言葉でしょうか。
音楽学校受験生だけではなく、全ての舞台人、
舞台人を志す人に心に留め置いて頂きたい言葉です。
どんな事も朗らかな心で、表情で対峙して欲しいのです。
その顔を、声を見て聞いて受け止める側がその人を好ましく思える
そのようにいかなる時でも振る舞えるようにする。
レッスンとはそのために心と身体に積み上げて鍛錬して行くものだと思っています。
厳しいようですが、そこで手心を加えて欲しいと思うのであれば止めるべきです。
舞台には上がりたいと思う人は山のようにいて
オーディションをすればモノによっては何千人、万の位に達する程の人が殺到します。
用意された座席は僅かです。
それでもやりたいのであれば、やるしかないのです。
楽な近道などありません。
受験をしたいと思われる方は、そういった事もよく考えて
それでも「そして、朗らかに」進んで行けるのか
覚悟を、腹を括ってレッスンして欲しいと思います。
厳しい事ばかり書いているのですが、どの生徒さんにも上手くなって
人の心を揺さぶるようなら歌を歌って欲しい、夢を叶えて欲しい、
そう願って日々レッスンしています。
さて、私は土曜日の公開レッスン、26日の演奏会に向けて練習、暗譜！に勤しみたく…
本日は強行軍にて東京でのK-BALLET COMPANY「海賊」初日を観て来ます。
中村祥子さんと遅沢祐介さんがこの公演で退団されるとの事。
最後の踊りを見届けて参ります。
美しいものを目に焼き付けて、それを糧に歌いたいと思います。
最近山のようにレッスンが続いて声帯も少々お疲れなので、声帯休めも兼ねて。
東京の空は曇り、雨になるのかなぁ？
最後までお読み下さいましてありがとうございました。
明日からもがんばってブログを更新するモチベーションが上がりました。
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