『果てなき旋風の目指す先に　ミナミセンプウ ②』『果てなき旋風の目指す先に　ミナミセンプウ ①』前回の更新においては、ミナミセンプウのテレカを4枚まとめて上げました。ある意味、良いきっかけとも言えるので…

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古馬の最高賞金レースでもある、1995（平成7）年の第30回福山大賞典に駒を進めたミナミセンプウ。

鞍上には小嶺英喜騎手が戻ってきて盤石の態勢と思われましたが、西日本アラブダービーからアラブ王冠への長距離の連戦、しかも圧勝を続けた疲労残りが懸念されました。

しかし、前年秋の福山菊花賞を勝って、ミナミセンプウを迎え撃つ古馬代表ともいえたイエローホーマーが出走を回避。

骨っぽい相手は、新春賞から9連勝で一時は古馬ナンバーワンの期待もあったヘイセイガバナーぐらいになりました。

ただ、対抗馬筆頭に推されたヘイセイガバナーでしたが、連勝がストップしてからは精彩を欠くレースが多くなり、金杯ではミナミセンプウとの直接対決に敗れていたことからも逆転までは難しいとの評価にとどまりました。

長距離戦、そして徹底先行型不在とあってスローペースは必至と見られた中で、ハナを奪ったのは本来なら差しに構えたいはずのイムラッドキング。

外目の枠番を引いていたミナミセンプウは包まれることもなく、楽々と好位の3番手を取ります。

その時点で勝負あったと見たのでしょうか、他馬の騎手に仕掛けはなく、膠着状態が続いたままレースは終盤へ向かいました。

向正面でミナミセンプウが抜け出すタイミングを見計らっているところに、ワンテンポ先の仕掛けを敢行したのが、2番手にいた単勝3番人気の古豪タイムシャークでした。

重賞はおろか、A1級の特別戦でも勝ち星のないタイムシャークが高い支持を集めたのは、豪腕・鋤田誠二騎手なら必ず見せ場を作ってくれるはずという、馬券から離れてレースそのものを楽しもうとしたファン心理が働いたからでしょう。

残念ながらミナミセンプウはタイムシャークを瞬時に交わし去っていき、仕掛けを遅らせて続いていった馬たちにも次々と抜かれて、あえなくブービー9着に大敗となりました。

とはいえ、タイムシャークが動いた瞬間、スタンドが小さいながらもワッと湧いたのは今でも記憶に残っています。

ファンの期待に応えたタイムシャークと鋤田騎手、「アッパレ！」だったのではないでしょうか。

もちろん主役は、ミナミセンプウ。

最終コーナーを前に先頭に立つと、迫るヘイセイガバナーを4馬身差に突き放し、文句なしのチャンピオン襲名と相成ったのでした。

そして次なる目標は、佐賀・西日本地区招待第5回アラブ大賞典。

旧4歳後半以降を駆け足で通過してきたこともあって、ゆとりを持たせたローテーションにより第15回福山マイラーズカップ1着をたたき台にしての参戦となりました。

実績は文句なし、そして引退を月末に控えた小嶺騎手は4年前にグリンダイオーで当レースを勝利してコースも熟知。

確勝級の評価も聞かれる堂々の1番人気でした。

ところが、ミナミセンプウにとっては誤算ばかりが続くレースとなってしまいました。

佐賀競馬場への道中、雪も混じる悪天候に見舞われ、輸送時間に大きなタイムロスが生じました。

いくら他場への輸送には慣れっこのミナミセンプウといえども、やはりストレスは大きかったことでしょう。

次に、逃げ馬のヒカリバーバが追い切り後の脚部不安により出走を断念したことで、展開面が読みづらくなってしまいました。

レースになると大外から元道営で地元のワカゾノヒットが飛ばして先頭に立ち、最内枠のミナミセンプウは兵庫のヒカサクィーン（2番人気）と並んでその直後を得ます。

これをマークする形を取ったのが、地元の総大将的存在、オクタマキング（3番人気）。

差し脚鋭いタイプで、もうちょっと後ろに陣取って後半勝負に出るものと見られていただけに、少々意外な展開となりました。

さらに誤算は続きます。

福山大賞典ではレース中の隊列変化がほとんどなかったのに、レースもまだ前半、最初の向正面で高知のブルーノーズが5番手から一気に捲り上げて2番手まで進出。

連れてヒカサクィーン、オクタマキングと上昇し、ミナミセンプウは5番手まで後退させられてしまいました。

レース後半にも動きが見られ、ブルーノーズがワカゾノヒットを早めに交わすと、ヒカサクィーンとオクタマキングは進路を内に取りつつ追撃を開始。

ミナミセンプウと中団から上がったヘイセイガバナーは外に進路を取らされることに。

大外をブン回すことになったミナミセンプウはスピードに乗ってコーナーを回り、最後の直線で豪快に伸びを見せますが、ロスなく立ち回ったオクタマキングははるか先にゴールしていました。

粘り込むブルーノーズをかろうじてハナ差とらえての2着は、誤算続きを思えば「負けてなお強し」と言えました。

しかしながら、かなりの負担を強いられたレースだったことに変わりはなく、これ以降は順調さを欠くことが増え、そして誰もがいつか迎える衰えとの戦いがやって来るのです。

（つづく）

果てなき旋風の目指す先に ミナミセンプウ ③

果てなき旋風の目指す先に　ミナミセンプウ ③