トランスジェンダー ROSE

 

性別違和の診断を受け、男性の自分が、心は女性として自認するトランスジェンダーであることを認識した時、私は心の底から悩みました。   

 それは、 これから女性として生きていく不安ではなく、妻へのカミングアウトについて、すべきがどうか.....

もし、妻にカミングアウトしたら、離婚もあり得るし、それ以上に妻の苦しみや悲しみを心配しました。 

このまま、私は、女装シンガーパフォーマンスとして、妻に偽り、妻の見えないところで、女性として生きる選択が良いか?

 

でも、私が決断した選択は、今日まで一緒に暮らしてきた妻には正直に話そうと....   たとえ、最悪な結果になってもそれを受け入れようと思いました。

 

「京子 今まで、自分は、パフォーマンスの女装を   許してもらったけど

 自分の心には、本当の女性が存在する事に気付いた。

 だから、これから先は、男性でなく女性として生きて いきたい。

 京子とも、変わらす一緒に暮らしたい。」

     

 暫く沈黙が続き、妻の口から出た答えは.....

 

  「いいんじゃない。

     それは、あなたが決意したことでしょう。 

  あなたが、女性として生きることに、周囲は賛成し  てくれる人もいると思う

  でも、反対に、あなたに対して、違和感の視線や偏  見の言葉をあびせる人もいると思う。  

  一番身近にいる私が支えになってあげないと、誰が

  あなたを理解し、寄り添ってくれるの だから私が  味方になる」

 

  妻の答えです。

 

  妻の言葉は、私の背中を見えない強い力で、押して  くれました。

 

  更に、妻の言葉は続きます。

 

 「あなたが、女性として姿形が変わっても、本質的に  あなたは、出会った

  時の猛志さんと何も変わらないから、私の心の中は  今まで通り、女性のROSEでなく、男性の猛志とし  て思い続けたい。 それでいい?」

 

   私は、「それでいいよ」と答えました。

 

私は、妻の自由の権利を尊重し、受け入れたいと思いました。

 

私は、実生活で男性の姿になることは全くありません。妻と外出し買い物をする時、冠婚葬祭時、家の中も全て、私は女性の姿で暮らしています。


妻にカミングアウトして3年後、FBS福岡放送ドキュメンタリー『目撃者f』の取材を受けました。

その時、妻の日記が一部、公開されました。

記述には、私が女装シンガーになった時から、カミングアウトした時まで、妻の心情が書かれていました。


夫は、突然、女装シンガーになりたいと言うが、大丈夫だろうか?


女装は、ライブやイベントの時だけと言ったが、今は毎日、女性の姿になっている。

もしかしたら、性同一性障害では?

私は、離婚を考えないといけないのか?

妻の葛藤が綴られていました。


妻は、いつか、私がカミングアウトすることを想定し、

その時の答えを考え続けていたことを知りました。


妻が、理解し、寄り添ってくれた言葉は、その時に出た答えではありませんでした。 ずっと妻が悩み、考えてきた答えでした。  

 

     

     

  京子  ありがとう

 

 私 幸せだよ

 

                            つづく