トランスジェンダー ROSE

 

 

 

 

私の両親は、子供の私から見ても仲の良い夫婦だったと思います。

 

父は、真面目を絵に書いたような人で、ドライブが好きで、大の巨人ファンで、仕事が終わると、寄り道はせず、自宅にもどる伝書鳩のようでした。

 

母は、ずっとぽっちゃり体形が変わらず、よく食べ、よく笑い、カイロのような温かい手をした優しい人でした。

 

    

父と母は、いつも一緒に行動することが多く、周囲からはおしどり夫婦と呼ばれていました。

 

 

両親のエピソードで、思い出すことがあります。

 

父がカセットテープレコーダーと車を買ってきた時の話です。

 

 

     

   

    カセットテープレコーダ 三菱ミニカ

 

 

父がある日、写真のカセットテープレコーダーを買ってきました。

 

父は、母を呼んでこう言いました。

 

 「母さん ちょっとこれ見て」

 

父は、カセットテープレコーダーを、母の目の前に差し出しました。

 

    

 「あなたが、それ買ってきたの ?   いったいいくらす  るの ?」

 

母は、少し怒った様子でした。

 

当時のカセットテープレコーダーは、まだステレオが無い時代であり、録音機能がついているタイプは、とても高価でしたから......

 

父は、価格は言わず、録音をして、母の気をそらそうとしました。

 

 「あー あー 本日は晴天なり」

 

  次の瞬間  

 

 「ブーゥ」

 

父は、特大のオナラをしたのです。 

勿論この音も録音されました。

 

再生をすると、話している音声より、オナラの音が鮮明に聞こえます。

 

母は、録音された父のオナラの音で、怒りも冷めてしまいました。

 

 

 次の話は、この三菱ミニカです。

 

カセットテープレコーダーの時と同じです。

 

 「母さん  車が来とるぞ」

 

父は、まるで車が、ひとりで歩いて来たみたいに母に説明しました。

 

 「あなた どうしたのよ この車」

   

父は、直ぐに母を車に乗せて、母の怒りを鎮めるためにドライブに行きました。

 

父の行動は、無鉄砲なところもありましたが、母を誰よりも大事にしていたと思います。 そして、そんな父の気持ちを一番に理解していたのも母だったと思います。

 

 

母が60歳になる前に、脳梗塞で倒れ、ずっと母に寄り添い介護をしていたのも父です。

 

そして、父が脳梗塞で倒れ、言葉を失いましたが、母への思いやりは、筆談に書かれた父の言葉に涙しました。

 

母の好きな番組があるから見せてあげてくれと....

 

そして、母を車いすに乗せ、父の面会に連れて行きました。

 

母は、既に意識のない父に向って話しかけます。

 

 「あんた 必ず帰ってきなさい あんたのおむつは、  私が代えてやる」

 

母の言葉を聞いた時、


これが夫婦なんだ

 

私は、そのよう両親から命を与えられたのです。

 

   

 

 

 

 私の、新曲です