ランジェンダー ROSE

 

 

 

 

河内でデート

 

私は、毎日、夕食の後は妻の家に行くことがルーティン化していました。

たとえ、仕事で遅くなっても、また出勤するように妻の家へ......

そして、妻の部屋にあるドラキュラの魔除けに阻まれることなく、ピアノの練習の後は、妻の部屋で、お茶や会話を楽しむようになりました。

 

いつしか、ピアノ練習が消滅し、妻に会うことが目的となったのです。

妻もそして妻の両親も、毎夜、伝書鳩いや鴉のようにやって来る私に対して、当たり前に不信感を抱いているだろうと感じていました。

一日に一回は、妻の顔を見たいという気持ちになっていきました。

妻への愛を確信した私は、正式に、結婚を前提として付き合うことを伝え、承諾を得られるならこのまま会うことを継続しようと思いました。 

その反面、恋愛未熟者の私ですから、またもや失態をして恋の終わりを迎える不安感も拭い去ることはできませんでした。

 

「今夜 プロポーズしよう」

「当たって砕けろ」 

   ではなく

「恋の扉を開いてやる」

 

いよいよその夜がやってきました。

不思議に、今夜は、あの時のような緊張感はなく、手の震えもありません。

少し大人になったのかも。

 

「京子さん お話があります」


「え ピアノのことですか ?」

  

「そうでなくて 大切な話です」

「これからは、僕と結婚を前提としてお付き合し    てくれませんか ?」

 

暫く、妻の沈黙が続きました。

 

「猛志さん できないです」

 

この言葉は予想していましたが、正直、プロポーズは早すぎたのかと思いましたが、時間を戻すことはできません。  

思い切って理由を聞いてみました。

 

「何故 ダメなのですか ? 」 

「私が年下だから 結婚相手にふさわしくないから ?」

 

また、妻の沈黙が続きます。

そして、妻の口からでた言葉は......

 

「私には、病気があるのです」

「精神分裂病 (現在は統合失調症)」

「以前、婚約をしたことがあり、相手側から破断されま した」

「私は、もう二度と結婚はしないと決めました」

「だから ダメなのです」

 

妻は、私に、ありのままの自分を全て隠さずカミングアウトしました。

現在も、妻の承諾のもと病名はオープンにしています。

 

「京子さんも、病気も、一緒に受け入れたい

 だから、結婚を前提に付き合って下さい」


「私の両親にも、ちゃんと理解してもらいます 心配し ないで大丈夫だから」

 

     

このような経緯から、私たちは、晴れて結婚を前提とした付き合いがスタートしたのです。

 



            自宅の庭でデート

 

でも、またまだ、結婚までには、様々な壁が立ちふさがります。

 

                                    

                        

作詞・作曲 ROSE