前回の劇的なエンディングを受けて、氷月(波瑠さん)と土屋(山本耕史)の関係が動揺し、穂村(森本慎太郎)と木皿(倉悠貴)も巻き込んで、柊班メンバーのキャラクター描写がダイナミックに動き出した今回。
素材となる犯罪事案の展開がどちらかと言うと、比較的淡々としていることもあって、刑事ドラマというよりは、人間ドラマとしての側面が大きくクローズアップされてきている印象。
いや、これ、率直に言って、個人的には歓迎すべき流れ。
実際、今回のエピソードも、柊班メンバーのやり取り、掛け合いは見応え十分。
もちろん、人間ドラマの中軸になっているのは、主人公・氷月とバディ・土屋との絡み。氷月が土屋の裏切りにあって、心を閉ざし、土屋を遠ざけようとする一方で、土屋は何とか氷月を守ろうとし、互いの思いがすれ違う描写が歯がゆく、もどかしい。監察官・貝原から、君も柊を恐れているのではないか、と問い詰められ、自問、葛藤する様子の土屋の姿が、エンディングでの、氷月と土屋が向き合うシーンにつながり、辛い記憶と戦いながら、事件に立ち向かう氷月の、力になりたかった、支えになりたかった、という土屋の真摯な言葉の重みを増す。このシーンの、交互に大写しになる、氷月と土屋の揺れ動く表情の交錯は、このドラマでも白眉の芝居だと思う。
人間ドラマという意味では、このエンディングに至るまでの、土屋と穂村との屋上での対話シーン、ここ、瑞江の殉職の重荷を氷月だけに背負わせるわけにはいかない、という言葉は本心ではなかったのか、という穂村の糾問に、土屋が黙って、出かかっている言葉を飲み込むのも、リアリティーがあって、うならされる。
また、穂村と木皿が土屋の立場や氷月の過去を知るシーンや、木皿が氷月に自分の思いを伝え、謝ろうとするシーン、さらに、穂村が氷月に、氷月の心情への推し量りと、氷月への信頼を熱くぶつけるシーン、柊班のメンガー相互の関係が丁寧に演出されていて、すごくよかった。
そういう意味では、今回の素材となっている事件の内容も、氷月の心情と自然にシンクロするような、傲慢で自分勝手な父親とその犠牲になる不憫な母娘という、氷月の父親への感情がフラッシュバックする設定になっているのも、ドラマの展開にうまく棹を差している。
で、やはりなんと言っても、波瑠さんのお芝居の力がものを言っている、と思うのは、例えば、柊班メンバー同士の会話で、屋上シーンや事務所シーンが繰り返されるなど、ちょっと間違うと、わざとらしい、パターン化した作為的な演出になりかねないところ、これまで氷月の辛い過去と孤独で懸命な葛藤を演じてきた波瑠さんのお芝居があるからこそ、氷月というキャラクターの実在感、リアリティーが核になって、土屋、穂村、木皿とのそれぞれの思いを受け止める氷月の存在感にぶれがなく、しっかりとした人間描写が実現されている、と思う。
来週以降の見所は、崩れかけた柊班がどう立ち直るのか、氷月の凍った心にメンバーの思いは届くのか、そして、不穏なフラグとなっている、氷月の父親の出所、予想される氷月と父親との対峙、おそらくそれがこのドラマのクライマックスだろうけど、その時、孤独な氷月を支えることができるのは誰か、気がかりなことが多すぎて、ドラマの行方から目が離せない。