以前にも書いたんだけど(って、このタイトルのシリーズは結局いつもほとんど同じようなことばかり書いてるんだけど(笑))、よくインターネットの記事で、〇〇な女優ランキングとか〇〇な女優トップ10だとかいう類のアンケート集計を見るけど、この手のランキングで波瑠さんが上位に選ばれることはめったにない。上位に選ばれるどころか、たいていはランク外で、メジャーな女優として認知すらされていないんじゃないか、って訝しく思うことがたびたびある。

テレビドラマや映画での主演作品の数や頻度を考えれば、ほんと、あり得ない、不可解極まりない、とさえ言えると、客観的には思わなくもないんだけど、ま、これも前から書いているように、波瑠さんの世間での評判がどうであろうと、自分が波瑠さんとそのお芝居、主演作品の熱烈なファンであることに変わりはないし、どうでもよいと言えばどうでもよいこと。

ではあるんだけど、でも、波瑠さんの女優としての世間一般の認知度が高くない、っていうのは、考えてみれば、自分なりに納得できることでもある。

 

要は、波瑠さんが、世間一般の「女優」というステレオタイプにあてはまらない、独自の個性を有しているから、なのだと思ってる。

女優のランキングの上位や常連の顔ぶれを見ていると、いわゆる「ヒロイン」タイプの女優が圧倒的に多い。「ヒロイン」というのは、つまり、男性主人公の作品で主演男優の相手方を演じる女優、ということだ。

「ヒロイン」の役回りは、ヒーローである男性主人公が、苦難の冒険や闘いの果てに、最終的にその愛を手にする、いわゆる「トロフィー・ワイフ」のような存在、英雄が最後に結ばれるお姫様。あるいは、悪戦苦闘し、悩んだり葛藤したりするヒーローを陰で支え、疲れたヒーローを愛で包んで優しく癒し、ときには叱咤激励して奮起させ、物語に華を添えるマドンナの役割。

分かりやすい例では、NHKの大河ドラマやTBSの日曜劇場で主人公の献身的な妻とか恋人とかの役。

物語そのものにとっては、決して必要不可欠な存在ではないのだけど、でも、その存在はアクセントであり、ビジュアルの前面に出るメインの装飾要素であり、また、主人公への感情移入で心理的なフォーカスの対象となることから、女優としての印象(特に容姿)は視聴者や観客(特に男性)の心に強く残る。

まあ、あえて言うなら、語弊はあるけど、とびきり美しい「人形」のような存在。

言っておくけど、これ、その女優の「演技力」とは、まったく関係のないこと。いくら演技力があって、演技派と呼ばれる女優でも、芝居の本質が「人形」にとどまっている人はたくさんいる。

そして、これも語弊はあるけど、女優ランキングというのは、特定の作品や芝居の内容とは直接には無関係のランキングなのだから、そういう「人形」としての側面がクローズアップされるのは、現今の世間一般の風潮からすれば無理もないところ。

 

波瑠さんの場合は、そういう「人形」のような役を演じることはほとんどない。また、波瑠さんは、作品や芝居以外でのキャラクター自体をアピールの対象とするような「アイドル」性もほとんど感じられない。

波瑠さんがこれまで演じてきたのは、男性主人公の相手役としての「ヒロイン」や「人形」ではなく、あくまで「人間」だ。

特に、「おそろし」で初めてドラマで主演し、「あさが来た」でブレイクして以降は、波瑠さん自身の意志なのか、事務所の方針なのか分からないけれど、ステレオタイプのヒロイン役はほとんど演じていない。

最後に「ヒロイン」を演じたのは、「BORDER」の比嘉ミカだろう。確かに、このキャラクターは、人間としての掘り下げや多面性の描写が甘い、波瑠さんには役不足なキャラクターだったと思う。(その後のスピンオフ作品では主人公になって、少し取り返したけど)

逆に、例えば、「世界一難しい恋」や「もみ消して冬」では、確かに役どころとしてはヒロインではあるけど、柴山美咲にせよ、北沢知昌にせよ、典型的な「人形」としてのヒロインではない。ヒロインというよりは、主人公の行く手に立ちふさがる障害、むしろ敵役、ヴィラン(笑)と言っても過言じゃない。これ、どちらもコメディなんだけど、主人公がボケ役とすれば、波瑠さんが演じるのはツッコミ役。このツッコミ役のツンデレ感は、「人間」をしっかり演じることのできる波瑠さんならではの絶妙のお芝居になってる。

こういう役を演じさせたら、今の日本広しと言えども、波瑠さんの右に出る者はいないだろう。

 

コメディということで言うと、波瑠さんのコメディエンヌとしての実力はとにかくもう抜群で、最近はコメディ作品が多いこともあって、主演を重ねるたびにお芝居にますます磨きがかかってきている。

直近の「魔法のリノベ」は言うに及ばず、「#リモラブ」や「サバイバル・ウェディング」でも、真行寺小梅、大桜美々、黒木さやかと、それぞれにめちゃくちゃキュートで魅力あるキャラクターを見事に演じ分け、それぞれの個性で笑わせ、そして泣かせる。まさに、ロマンティック・コメディの女王と言っていい素晴らしいお芝居。

コメディ色という意味では、「G線上のあなたと私」の小暮也映子でも「恋に落ちたおひとりさま」の万平聡子でも、ヒューマン・ドラマにおける、シリアスな要素やコメディ・リリーフとのバランスは、波瑠さん以外には演じる役者が想像できないはまり役だと思う。

思うに、コメディというのは、キャラクターが大真面目であればあるほど、「人間」としてのリアリティーを突き詰めるほど、その必死な姿が滑稽に思えてくる、そういう皮肉な要素があって、それが波瑠さんの「人間」を表現するお芝居との相性の良さにつながっているんだと思う。

そういう意味で、喜劇役者というのはすごく難しく、優れた役者には喜劇役者が多い、というのも頷けるところ。ちなみに、あからさまに笑わせることを志向する「お笑い芸人」とは、まったく違う、というところがポイントだとも思う。

 

ということで、波瑠さんが女優ランキングの上位でなくても、常連でなくても、それはかえって波瑠さんの役者としての魅力を裏書きしているんじゃないか、と手前勝手に解釈して(笑)、これからも波瑠さんのお芝居、特に、コメディエンヌとしての活躍には大いに期待してる。