ああ、ほんとに楽しいドラマだった。

とうとう迎えた最終回、期待した以上の大団円で、幸福感いっぱい、でも、梅玄コンビともまるふくメンバーともこれでお別れかと思うと、名残惜しさと寂しさがこみ上げてくる。

波瑠さんのドラマでは、いつものことではあるんだけど、とりわけ、このドラマはキャラクターの魅力と世界観の心地よさが抜群だっただけに、いつにもまして喪失感のインパクトが大きい。

 

だから最終回は、ドラマとの別れを惜しむようにもう何度もリピートして観ていて、見どころはほとんどすべてのシーンのように思えるんだけど、特に、印象深く心に残ったのは、やはり、小梅(波瑠さん)を連れ戻しに玄之介(間宮祥太朗)が会いに行くシーン。

小梅に戻ってきてくださいと頼む玄之介、小梅と出会って自分が変わったこと、小梅とのバディの忘れられない思い出、正直に小梅への思いを口にする玄之介の飾らない言葉を聞くうちに、感情を抑えていた小梅の表情に次第に切なさがこみ上げ、ため息で唇が震え、目が潤んでくる。

まるふくを壊せるわけない、と自分の思いをようやく吐き出す小梅は、それでも強がって必死のツンデレ、福山家やまるふく工務店をディスりながら、でも、まるふくを愛する気持ちは隠しようもなく、あふれる涙を拭いながら、最後までまるふくを守ろうとする。

観ていてい涙が止まらない。波瑠さんの泣きのお芝居には、いつも心を揺り動かされるけど。本当にこのシーン、波瑠さんと間宮祥太朗のお芝居の相性は神がかってると思う。

 

感動と言えば、終盤のクライマックス、一休食堂へのプレゼンの場面でもまた泣かされる。

ふと立ち寄った場所が帰る家になった、と小梅の感慨に依頼者夫婦への共感がシンクロする、このやり取りには、しみじみと心が和み、じーんと胸が熱くなるものがある。小梅の言葉を受けて、玄之介と目と目を合わせる、このお芝居がまた絶妙。

そして、おなじみの最後の決め台詞だけど、「どうぞイメージなさってください、これからの生活を」から、玄之介と二人で、「リノベは・・・魔法、なんです」の柔らかく、温かい響き。

このドラマでもう何度も繰り返された台詞なんだけど、波瑠さんのお芝居、声の調子、ニュアンスは、案件ごと、対する依頼者ごとに毎回違って、毎回新鮮に聞こえるのがすごく不思議。聞くたびに、幸せな言葉の余韻に浸っていられる。

他にも記憶に残るシーンはたくさんあって、久保寺(金子大地)の小梅への真剣な(笑)問いかけシーン、小梅がまるふくに帰ってきた「ただいま」のシーン、スキャンダル漏洩で小梅と玄之介が落ち込むシーン、二人で山へ行ってやまびこでいちゃこら(笑)のシーン、久保寺の反逆をきっかけに円卓の部下団が崩壊するスカッとシーン、竜之介(吉野北人)とミコト(SUMIRE)がいのまにかバディになってるシーン、お決まりおでん屋台での梅玄コンビのラブラブ・ショート・コント(笑)、そして、毎回の楽しみ、エンディングでの幸福なリノベのアフターの描写。

いや、最終回は見ようによっては、丸く収まりすぎで、いかにもドラマの世界だけのような幸せマックス大団円だけど、このドラマは、それにまったく違和感がない。

 

このドラマの魅力って、何度も言うけど、小梅と玄之介を中心とするキャラクターの魅力であって、キャラクター同士の掛け合い、やり取りをずっといつまでも観ていたい、そういう気持ちにさせる世界観の作り込みが見事なことだと思ってる。

確かにいわゆる「お仕事ドラマ」ではあるのだけど、それはキャラクターの活動する舞台がリノベ営業という仕事を中心としているからであって、決して、仕事の内容や問題解決のストーリーが中心なのではない。

このドラマのSNSでの感想とか見ていると、中にはもっとリノベ案件の内容を前面に出してとか、恋愛要素はいらないとか、そういう意見もあるようだけど、自分からすると、それはかなり的外れな見方だと思う。

そもそも星崎真紀の原作からして、決してリノベの内容が最重要のテーマなのではない、と思っている。漫画の創作のきっかけも、リノベを体験する中で業者によって営業担当のスタイルがそれぞれ違うってことに感心し、興味を持ったから、ということだそうで、つまり、それはあくまでリノベという仕事や技術ではなく、リノベに関わる「人間」に焦点があるからではないだろうか。

そういう意味では、このドラマ、リノベ営業を担当する梅玄コンビの人間性やそれを取り巻く仲間、リノベの依頼者を含めた人間ドラマとして、非常によくできていたと思う。

恋愛要素についても、梅玄コンビの場合は、ただ異性として好きとか嫌いとかじゃなく、お互いに人間関係でやらかした者同士が仕事を通じて人生を再生する、その過程での共に助け合い、支え合うバディとしての信頼関係、一種の友情のような関係から、次第に相手をかけがえのない存在、ずっと一緒にいたい、という思いへと進展してくる、ドラマのテーマとぴたりマッチした、欠かすことのできない重要なファクターになっている。

今クールは、他のテレビドラマでも男女のバディものが複数あったようだけど、このドラマの梅玄コンビほど二人の関係の深化と親密化が重要な意味を持つ作品はなかったように思う。

 

あと、世評としていろいろ賛否はあるみたいだけど、まるふクエストのRPG演出とか、ビル面モノローグとか、ハイキングでのやまびこシーンとか、京子(YOU)のバーでのかませメンバー(笑)のくだまきシーンとか、小出(近藤芳正)と越後(本田力)のおやじコントとか、細かいところまでいろいろと複雑に構成され、詰め込まれてたかなり多彩な「遊び」の要素は、ドラマの世界を豊かにし、キャラクターを多面的に表現する意味で、自分はかなり成功していたと思って、評価したい。

エピソードで言うと、リノベ案件やプランの内容、依頼者とのやり取りの人間ドラマとして、特に良かったと印象に残っているのは、夫婦別寝の第2話、風水案件の第4話、マドリスト飯星の第6話だな。特に、前にも書いた「未解決の女」の第4話と同様、真飛聖がゲストの第6話は神回だったと思う。

 

このドラマ、全体的なイメージとして、波瑠さんの過去の作品で言うと、「あさが来た」に近いように思う。仕事ができて、周囲を引っ張っていく、合理的で前向きな主人公というだけでなく、傾きかけた家族経営の企業に颯爽と現れて、その窮地を救い、家族や仕事仲間との一体感がドラマのコアとなって、さらに、凸凹男女ペアの愛情が物語の感動を呼ぶ、どちらも婦唱夫随(笑)、波瑠さん演じる強い女性主人公を優しくお人好しな男性パートナーが支える、という構図。

これ、波瑠さんのドラマとしては、鉄板の世界観でしょ(笑)。

それと、魔法のリノベは、コメディエンヌとしての波瑠さんの資質が爆発的に輝いて、リモラブとはまた違う、波瑠さんのお芝居の魅力、数々の絶妙なアドリブもあり、新しい一面を観ることができて、すっかり満喫した。

素晴らしい共演を見せてくれた間宮祥太朗とも、まだどこかの作品でコンビネーションを見られたらと願ってやまない。

とにかく大満足のこのドラマ、原作の星崎真紀、脚本の上田誠はじめ、プロデューサー、監督、スタッフ、特に、エモいエンディングのために頑張った美術関係のスタッフ、波瑠さん、間宮祥太朗を含め、レギュラー陣、ゲストを含むすべてのキャスト、オープニング曲のさとうもか、主題歌のヨルシカ、撮影協力その他すべての関係者に大きな拍手を送りたい。