ドラマはクライマックスが近づいてきて、梅玄コンビをはじめとするキャラクターたちの関係も波乱含みのカオス状態(笑)。でも、それがドラマの展開とキャラクターの造形に奥行きとダイナミズムを与えて、もやもや、じりじり、はらはらする一方で、どきどき、わくわく、楽しさもひとしお。

 

今回のエピソードは、ここまで抜群の相性でバディ感を高めてきた梅玄コンビが一時的に離れ離れになって、それぞれ単独行動となる展開になってる。それが、ある意味、二人にとっての試練となる、クライマックスの序章=導入にあたるようなストーリー。

小梅が弟の結婚式で実家に帰省して、二世帯住宅への建て替え案件という予定外のハプニングに巻き込まれるのは原作通りの流れ。

真行寺家の一見ごくごく平凡で穏やかな、でも、水面下では目に見えないわだかまりや鬱屈した感情が積もっていて、コミカルとシリアスの入り混じったその描写は、さすがに実写で役者が演じているだけあって、原作の漫画以上に非常にリアルだった。

今回のキャスティング、小梅(波瑠さん)と父・鳥雄(相島一之)、母・喜代子(宮崎美子)の3人の掛け合いは、本当の親子・夫婦のようで、観ていてうんうんとうなずいてしまう納得感がある。

結婚式で交わされる小梅への嫌みを含んだ会話のシーン、独身の同僚のことに触れられ、玄之介(間宮翔太郎)を両親に紹介するイメージで、バツ2、子持ち、弟が妻と駆け落ち、という展開から、小梅が、ないない、と慌てて打ち消す、この描写は原作にあるけど、ドラマでは細かく突っ込んでいる分、可笑しさが増して、笑いをこらえられない。

朝食での小梅から鳥雄への結構辛辣な突っ込みとダメ出し、これは原作にないシーンだけど、小梅というキャラクターのらしさがあふれていて、また、父と娘との関係が見事に表現されている。

さらに、スマイルホームの営業担当・磯辺(徳重聡)が来訪しての3階建て二世帯建替えプランのプレゼンのシーンも、父と娘、娘と母、姉と弟という、それぞれの思いが交錯して、ホームドラマとしてとても面白い。

リノベのいきさつの結果、ようやくお互いに素直になることができて、父と娘の気持ちが通じ合う縁側のシーン、涙が出そうになるのを強がって泣くまいとする波瑠さんの半泣き顔のお芝居はもう最高。

そういう意味で、今回のエピソードは、まさに典型的なホームドラマの展開だったと思う。

考えてみれば、波瑠さんの主演ドラマでこういう家族の愛憎を取り上げたものって、これまであまりなかった。だいたい波瑠さん演じる主人公の親が出てくるシーンって数えるほどだし、出てきてもたいてい片親という設定だし、両親そろってドラマに登場するのは「おかむす」ぐらいじゃないかな。「おかむす」も一人娘という設定だったから、今回のように弟がいるのも珍しい。

こういう波瑠さんのお芝居はあまり観たことなかったんだけど、今回の実家帰省エピソードのお芝居は、リアリティーたっぷりで見応え十分だった。

 

で、やはり、今回のもうひとつのテーマは、梅玄コンビの絆にとっての障害とその克服のプロセス。玄之介と離れて一人になることで、これまで玄之介を引っ張ってきたはずの小梅が、実は、自身も玄之介の優しさと誠実さに支えられていたことを実感する。グローバルを辞める経緯の中で人間不信になっていた小梅が前向きに生き生きと仕事に取り組めていけるようになったのも玄之介がいたから、その思いが痛いほど伝わってくる。

一見カオスを招くだけのような竜之介(吉野北人)から小梅への積極的アプローチも、エピソードの構成としては、ある意味必然なところがあって、これ、原作では、小梅がいったん実家から戻って、一週間後にプラン見直しで実家へまた行くんだけど、今回のエピソードでは、実家の問題が解決するまでの間、小梅と玄之介がずっと離れていることが試練になるのだから、よって、実家リノベを数日間で処理するため、設計士=竜之介が実家のその場にいないと難しい、って、何だかご都合主義の設定のようだけど、それが小梅の玄之介への思いをはっきりさせる要素にもなっていて、錯綜しそうな人間関係とキャラクター表現をなかなか手際よく見せていて良いと思う。

それと、完全に余談、ラストの波瑠さんの浴衣で線香花火のシーン、って、これファンサービスなの??(笑)、波瑠さんのあまりに清冽な美しさ、しっとりとした可憐さに、じっと見惚れて気が遠くなりそうなんだけど(笑)。

 

あと、リアルタイムで観ている間、シーンの切れ目ごとに日時がたびたび表示される意味が分からなかったのだけど、次回予告で、そうか、小梅の実家を舞台にしたエピソードがA面で、その間、同時進行で次回のリノベ案件がB面になっているので、時系列が重要なんだな、と納得した。

さて、そのB面のエピソードなんだけど、これがおそらく原作からのリノベ案件の最後となるんじゃないかな。だとすると、残り3話のうち、最後の2話はドラマのオリジナル・エピソードということになる。ここまでの流れからすれば、それは、グローバルの有川(原田泰造)が企むプロジェクトがらみということだろうし、それがラスボスの魔物になるのだろう。

これは、原作にはない、まるで未知の世界なんだけど、このドラマのここまでの良い流れと幸福な世界観を壊さずに、そして、何より、梅玄コンビをはじめとするキャラクターの魅力を最大限に生かすような、そんなクライマックスになることを祈らずにはいられない。

どうか脚本家と監督が暴走しませんように(笑)。