前回の感想で懸念していた鬱展開だけど、いきなり冒頭から少女時代の聡子が雨の中ずぶぬれ。悲惨な描写と思いきや、予想外だったのは、それが聡子のお気に入りだったってこと。濡れた髪を父親に拭いてもらうのが好きだった、というのがまた泣ける。というのは、ここから暗転して、父親の不祥事で世間の心無いバッシングにさらされる。って、子供相手にこんな容赦ない突撃インタビューなんてあり得ないだろう、女性インタビュアーの蛇のような舌なめずりも強烈すぎる演出、とかいう突っ込みはいったん置いといて(笑)。

 

今回のエピソードのテーマは、夢か現実か、本当の自分とは何か、ってことのよう。

 

辛い思い出の夢から覚めて、マリウス(涼介)とのことも夢だったのでは、と心細くなった聡子も涼介から預かったUSBメモリを見て、恋の進展が夢ではないことを実感する。

嬉しくて思わず顔がほころんでしまう聡子だったが、職場ではまた一転して、冴えないおひとりさまから脱却した聡子を巡って波紋が広がり、思うようにならない現実に直面。職場では、折り合いの悪かったエリナだけじゃなく、後輩のあさみからも嫉妬と恨みを買い、振られた腹いせの村石からも冷たい言葉をぶつけられ、おひとりさま仲間だったはずの悦子にも嫌味な態度をとられて。

落ち込んでしまった聡子には、図書館でひとりぼっちの少女に幼い自分の姿が重なって、どんなに着飾っても本当の自分からは逃げられない、本当の自分を知ったらマリウスは失望する、あんたなんか誰からも愛されない、と「現実」をつきつける厳しい言葉が幻聴となって響く。

でも、鬱展開になりそうなところを、期待した通り、スタンダールが救いの手を差し伸べてくれる。愛情の幅を広げろ、というアドバイスで気を取り直した聡子が、自分に辛くあたった同僚たちにも誠意で応えることで、失いかけた信頼を取り戻す。

そして、涼介の作品に対する丁寧で心のこもった感想の文章がスタンダールを感動させ、多くの本を読むことで身に着けることができた聡子の知識と教養こそが本当の自分の持ち物だと力強い言葉で励まされる。

ここ、聡子の感極まった表情に思わずジーンと胸が熱くなるシーン。

 

今回のクライマックスは、何と言ってもレストランでの涼介とのデートの場面。

傍らに立つスタンダールに背中を押されながら、一生懸命に緊張を飼い馴らしつつ、勇気を出して、飾らない本当の自分を見てもらおうとする聡子の姿が健気で、思わず感情移入。

うつむきがちに、でも、顔を上げようとして、自分で自分を応援する、ヴォレ、の言葉が感動的。また、フランス文学を好きになったきっかけ、愛人・ラマンを読んでた理由がHなシーンが多かったから、って理由が傑作(笑)。

ぶっちゃけた打ち明け話が涼介に受けて、二人でひとしきり笑った後の涼介からの告白、好きです、僕とつきあってください、の言葉に、レストランの客たちじゃないけど、こちらまで踊りだしたくなるほど嬉しい気分。

なるほど、シンデレラ・ストーリーの舞踏会シーンは今回のエピソードだったんだな。

鬱展開を心配したのは杞憂だったかな。

と思ったのもつかの間、舞踏会は12時の鐘が鳴るとすべての魔法が解けて、シンデレラはお城から逃げ出さなければならなくなる。

冒頭シーンと同様、大好きな雨に濡れて幸せ一杯の帰り道、悦子に父親の不祥事の過去がばれて、現実に引き戻され、ショックで立ち尽くす聡子の姿があまりに痛ましい。

 

傷心の聡子を救えるのは、スタンダールか、それとも涼介か。

でも、涼介も聡子に言えない秘密を抱えているんじゃないか。

今度は、聡子が涼介を、妄想の王子様マリウスではない本当の涼介を信じることができるか、それが試されるんじゃないか。

いろいろとドラマの要素が絡まり合って、これからが物語全体のクライマックスになりそう。

 

余談だけど、聡子と涼介のデートシーンのレストラン、これ、日比谷のアピシウスだよね。確認したら、エンド・クレジットの撮影協力にも「APICIUS」って出てた。テレビドラマには、ときどき使われているみたいだけど。やっぱり、フランス文学がテーマのこのドラマ、クラシックなフレンチの名店を撮影で使うって、なかなか渋いね。

アピシウスもずいぶん行っていないので、懐具合にあまり余裕はないのだけど、久しぶりにまた行ってみようかな。別に波瑠さんに会えるわけじゃないけどね(笑)。