二転三転、紆余曲折、いろいろと錯綜した「ラブサスペンス」もついに最終回。

前回は、「サスペンス」の謎解きの内容がかなり強引で、しかも心情描写が薄く、説明中心の演出だったこともあって、ちょっと辛口の感想になってしまい、正直、最終回も監禁から脱出した雨宮による逆襲とか、野放しになったままの野瀬正の挙動とか、「スリラー」とか「ホラー」になってしまいそうな展開が若干心配でもあったんだけど、いやあ、兎にも角にもそれなりに、今回は「ラブ」が前面に出て、なかなか感動的なエンディングだったと思う。

 

スリラーにならずに済んだのは、本物の雨宮(林遣都・二役)による逆襲が手を付けられないほど悪逆非道って事態にまでは至らず、望緒(波瑠さん)を巻き込んでの中野幸(林遣都・二役)との対決シーンで決着を見ることができたから。

このシーンも主眼は、アクションによる問題解決ではなく、中野と雨宮という対照的な人格のコントラストを明らかにして、望緒の心情やそれぞれの関係の違い、人間ドラマとしてのキャラクター描写を強調すること。

本物の雨宮の残忍で酷薄な本性を見て取った望緒は、かつての自分の憧れが浅はかな幻想でしかなかったことを悟り、強い気持ちで、脅しにもひるまずに毅然として雨宮と対峙する。そういう強さを得たのも、中野の自分への一途で健気な思いに支えられてのこと。

ここは、望緒による雨宮への決別シーンという意味ですごく見応えがあった。

 

他方で、これとはまったく対照的に、望緒と中野との再会、お互いへの気持ちの呼応、切ない記憶の共有、憎しみと愛しい思いの交錯と横溢、そして悲しい別離のシーンは、二人の情感込めて交わす言葉と表情に、思わずじーんと目頭が熱くなる。

ここの波瑠さんと林遣都との素晴らしい芝居は、永久保存ものだと思う。

特に印象に残ったのは、警察に逮捕された中野と望緒との最後の別れの場面。望緒が今にも涙がこぼれ落ちそうに潤んだ瞳で愛おしそうに中野を見つめる、その儚い微笑み。

またね、中野くん、と言って、ゆっくりと二人の手が離れていく。

もう、これ、死亡フラグ全開の演出なんだけど、そんなことはどうでもいい、と思えてしまうほど二人の無言の芝居が感動的。

もちろん、忘れちゃいけないのは、中学時代の望緒と中野の子役の芝居も非常によかった。それぞれの芝居が非常に上手く共鳴していたと思う。

 

中野の最期は、ある程度は予想されたものの、ショッキングな展開。でも、ここも、確かにこれが彼の運命だったんだな、と納得できる。野瀬正(徳重聡)による物語の清算も、描写は必要最小限の一瞬のことで、過剰な演出がなくてよかった。

 

エンディングも望緒と娘の「みゆき」が前を向いて生きていく、という余韻が残るもの。

前回の感想で、望緒の妊娠は余計なエピソードではないか、とも思ったが、確かに物語の後味を苦すぎないものにする、望緒と中野との出会い、それによって望緒が得た何かをポジティブなものにする、という意味では、これもありだろう。

中学時代の幸せな同級生たちの幻影が望緒の心をかすめる、という最後のシーンも悪くない。

例えば、ウエストサイドストーリーみたいに、罪を犯した恋人が復讐相手の手にかかり、死別して悲劇のエンディング、みたいな終わり方もあるけど、それだとその悲劇の背景や責任に対する強い告発がないとドラマが成立しないから、まあ、このドラマにはふさわしくないだろう。

 

全体的に言えば、波瑠さんと林遣都の芝居を中心に、キャスト陣はみな頑張って台本以上のドラマを作り上げてくれたと思う。

サスペンスの謎解き部分は、かなり強引で無理があったように思うけど、最終回のラブストーリーを見る限りでは、前回までの釈然としない展開はすべて忘れてしまって(笑)、物語に没頭することができた。

確かに、これ、波瑠さんが座談会でコメントしていたとおり、優しく不幸な少年の孤独と愛の物語、という意味で、実質的な主人公は、中野幸、つまり林遣都だったのかもしれない。それだけ林遣都の芝居はすごかったし、それを受けて、また、相乗効果でドラマに厚みを加えた波瑠さんの芝居もすごかった、と思う。

ただ、あえて言うなら、これって、サスペンス要素はそんなに必要なかったんじゃないかな。別に中野と雨宮の入り代わりとかなりすましとかなくても、対照的な中野と雨宮という二人の間で真実の行方を巡って揺れ動く主人公、という形でもよかったんじゃないだろうか。そう考えると、奈々江(新川優愛)や優美(黒川智花)の死、という展開もプロットとして余計だし、稜(溝端淳平)や玲子(本仮屋ユイカ)もそれぞれの心情にもうちょっと突っ込んだ関係でストーリーを展開することもできたように思う。

まあ、確かにそれだと、ジェットコースターとかお化け屋敷のような視聴者受け要素がなくなっちゃうし、何より、林遣都のミステリアスな二役の芝居も見られなかったので、エンタテインメントとしての面白さは薄れてしまうかもしれないんだけど。

波瑠さんのファンとしては、その方がもっと人間ドラマとして感動的なものになったんじゃないのかな、などとつい妄想してしまう(笑)。

 

ということで、決してこのドラマも悪いドラマではないので、相変わらず波瑠さんのドラマに外れはないな、というのが結論。(と言うより、もともとかなり外れそうなドラマでも、波瑠さんや共演者の芝居の力で、無理矢理外れない恰好にしてる、というか(笑))

 

で、来週からは、波瑠さん主演の次のドラマがあるので、このドラマの余韻や「ロス」に浸る間もなく、楽しみが続くのは本当に幸せ。