んー、前回の感想では、このドラマ、ただの謎解きドラマでは終わりそうになくて安心、と書いたんだけど、今回は明らかに謎解き中心の内容で、それもキャラクター自身に真相のほとんどすべてを語らせる、というかなり説明的な展開で、ちょっとどうかなあ、と正直疑問に感じたのは残念。

望緒(波瑠さん)の薄れていた記憶が次第にはっきりして、雨宮修一の名を騙っていた男(林遣都)が、実は中野幸であり、望緒の絵、そして望緒自身に対して、優しく、儚く、そして切ない思いを抱いていた、という描写はなかなか感動的だったのだけど・・・。

真実を確かめたくて、養護施設に雨宮の母(高橋ひとみ)を訪ねてきたところへ、当の中野が現れ、ここからこれまでの経緯、人間関係、一部始終の説明と再現ドラマ中心のシーンが続くことになる。

虐待を受けていた中野が、親との心中を図って自宅に放火し、それを雨宮が目撃、撮影した犯行動画をねたに執拗なゆすりたかりを受け、実質的に中野が経営する会社の社長に雨宮がまつり上げられ、調子に乗った雨宮が強欲な悪行の限りを尽くし、虐待された雨宮の恋人が自殺に追い込まれ、逆上したその兄と中野が組んで、雨宮を排除して、整形して雨宮になりすました中野が本人に成り代わり、放火の犯行動画を抹消するため、情報取得を目的に中野が野瀬優美(黒川智花)に接触して、中学の同窓会を企画し、タイムカプセルに封印された携帯電話の回収を図り、それが奈々江(新川優愛)の手に渡ると、優美を利用してコピー動画を取り戻そうとし、不測の事態で奈々江が死亡し、DV夫に拘束されていた優美と接触するために開催した奈々江を偲ぶ会では、雨宮(=中野)を殺害しようとした優美が逆に毒を服用してしまい・・・。

いや、ここまでの説明が長い(笑)。

まあ、確かに一般の視聴者がネットで考察していた内容の最大公約数的なものと大きくはずれていないので、なるほどやっぱりそうだったのか、とそれなりに納得し、余計な肩透かしや思わせぶり、予想をはぐらかすだけのストーリーでなかったのはいいのだけど、こうやってあっさりと事実が明らかになってしまうと、観ているこちらの意識が語りの内容にばかり行ってしまって、人間の心情に対する思い入れの余地がほとんどなくなってしまう。

他方で、謎解きの結果、逆に疑問に感じることがいろいろと出てくる。

一番釈然としないのは、何故望緒が狙われ、殺されなければならないのか、いやいや、だったら、玲子(本仮屋ユイカ)や稜(溝端淳平)だって、同じように狙われてもいいんじゃない?むしろ玲子や稜の方が情報収集力もあって、雨宮(=中野)のことを怪しんでいたんだし。

望緒の後輩のりえ(松村沙友里)が事故にあったのは、望緒と間違われたのではなく、中野が望緒のためにわざとやったとか、心優しいはずの中野がいくら愛する人のためとはいえ、そんなことまでする??

中野が優美の不穏な態度を感じとって、自分に差し出されたワインをあえてすり替えるってのも、いや、そもそも優美が雨宮(=中野)を殺そうとするっていうのも、ちょっと突飛かつ強引な成り行きでどうも合点がいかない。

 

もちろん、それでも波瑠さんや林遣都の芝居には見るべきところがあって、わざと悪人を装って望緒から離れようとする中野とか、それがかつての火事の日の中野の去り際の姿に結びつき、中野の自分への思いに揺れ動く望緒の気持ちとか、それはそれでとてもよいシーンだったのだけど。

だけど、やっぱり、今回のエピソードの全体的な印象としては、人間心理の描写が薄くなってしまって、かつ、若干の無理矢理感(笑)が出ていたように思わざるをえない。

あと残すは最終回だけなので、いまひとつ釈然としなかったキャラクターたちの動機の部分について納得がいくようなエンディングになるといいのだけど。

 

ま、でも、今回一番予想外で驚いたのは、死んだと思っていた雨宮が生きていたことかな。しかも、監禁状態を脱して、これから雨宮の復讐が始まる、って、もはや「サスペンス」というより、「スリラー」ないしは「ホラー」(笑)にシフトしつつあるような気も。

その上、野瀬正(徳重聡)といい、サイコパスなシリアルキラーが二人もいるなんて(笑)。

 

あー、あと、これはいらないんじゃない、って思ったのは、望緒の妊娠。いや、別に妊娠とかいう要素がなくても、望緒と中野の心の絆を描くことはできるでしょ。

なんか、愛する人の子供を出産することが女性の人生にとって最大のイベントみたいな、自分の考えすぎかもしれないけど、そういう家父長制的な価値観が背景にちらついて、これもまた釈然としない。

いろいろ釈然としないことが多いんだけど、最終回ではスリラーっぽいきったはったの大立ち回りは最小限にして(笑)、きちんと人間ドラマ、望緒と中野の二人の愛の物語としての感動的なエンディングを期待したい。(実際、ちょっと難しいか(笑))