このドラマ、やっぱり「ラブ」(ロマンティック)サスペンスなんだなあ。

またまたメインの登場人物たち、望緒(波瑠さん)の同窓生の中から犠牲者が出て、想像以上にスピーディーかつショッキングな展開なんだけど、自分の感想や印象としては、謎解きの「考察」よりも、望緒と雨宮秀一(林遣都)とのはらはら、どきどきする秘密をはらんだような「ラブ」の関係の方がずっと心に懸かってくる。

 

優美(黒川智花)と夫・正(徳重聡)との衝撃シーンを目撃していまい、優美が夫からモラハラ・DVを受けているのではないか、と心配にかられる望緒。

ここも望緒の気持ちに寄り添うのは秀一で、喫茶店での会話でも望緒の落ち着かない様子を見て取り、優しく話しかけながら、虐待による暴力は体よりも心を傷つける、と望緒の心に重く響く言葉を投げかける。

思い立って優美のもとへ向かう望緒を窓越しに見送る秀一の後ろ姿が印象的。

優美の苦しみ、悲しみに深く感情移入し、優美を救い出したいと懸命に訴える望緒の思いに秀一が応え、支えになってくれる。

そうするうちにも、望緒は火事で両親を亡くし転校していった同級生・中野のことが何故か気になる。仲間6人で行った夏祭りの夜に火事が起こったこと、自分は具合が悪くなって途中で帰り、秀一に手を引かれながら家まで送ってもらったことを思い出す。ほのかな記憶に心ときめく望緒。

ひょんなことから、ただの幼なじみとしか思っていなかった稜(溝端淳平)から成り行きでのプロポーズを聞かされ、モヤモヤしていた望緒のところへ秀一から電話がかかってくる。中野の家の火事のことを秀一に確認してほっとして、自分の家まで送ってもらったことを話し、覚えているかと聞く望緒、絶妙な沈黙の後で、覚えていると答え、自分にとっても大切な思い出だと言う秀一に、思わず顔が紅潮する望緒。でも、望緒との電話を切った後で、夜の無人のオフィスのガラス窓に映った冷めた秀一の眼差しに感じる不安。

優美を救うためにでっち上げた、亡くなった奈々江(新川優愛)を偲ぶ会での望緒と秀一の睦まじげな姿をじっと見つめる優美の複雑な表情も、なぜか秀一の背後に潜む闇を感じさせて。

 

普通のサスペンスドラマだと、視聴者側の「考察」を喚起するのがドラマの主眼になりがちで、過剰な思わせぶりやはぐらかし、肩すかしが目立つのだけど、このドラマは謎解き自体に必要以上の複雑さはない。むしろ、テンポ良く、シンプルな展開で、ミステリー要素は無駄に拡散するのではなく、次第に絞り込まれていく感じ。

謎や疑惑の焦点がだんだんと秀一に集中していくようにも思える。

ミステリーの考察の主体は、視聴者よりも望緒。秀一が何者で何をしようとしているのか。でも、望緒は当事者で、しかも秀一に恋愛感情を抱いているから、「考察」では済まない。それは、出口の見えない迷路をさまよって、暗中模索しているよう。唯一の希望の光であるはずの秀一が実は最大の不安の根源になっていて。

望緒が行動を起こすたびに事態はどんどん悪化し、後戻りはできなくなっていく。

そして、このドラマで最も気がかりなのは、望緒と秀一との関係がこれからどうなっていくのか、どこに行き着くのか。秀一は本当に望緒のことが好きなのか。その「愛」が本当は「嘘」という悲しい結末に至ることはないのか。

そういう意味では、ここまで波瑠さんと林遣都のふたりの素晴らしい芝居に引き込まれ、それを取り巻く共演者たちとのハーモニーも見事。

 

ロマンティック・サスペンスと言えば、かなり古い映画だけど、オードリー・ヘップバーン主演で相手役がケーリー・グラントだった「シャレード」を連想する。主人公が相手に次第に惹かれていく一方で、相手の抱える謎が主人公の不安と不信を高めて・・・、というのはオーソドックスな展開。

「シャレード」は、結局ハッピー・エンドだったけど、果たしてこのドラマが大団円で終わるのか。

どうも今のところ、悲恋、悲劇の予感しかしないのだけど。

何だか祈るような気分で(笑)次週以降のストーリーを心待ちにしている。