物語もいよいよクライマックス。

今回は、ドラマのテーマの核心に迫る内容で、救急救命の医療現場のリアルな描写がストーリーの大半を占め、緊迫感と臨場感にあふれていた。

特に、波瑠さん演じる美月をはじめ、幸保(岡崎紗絵)や深澤(岸優太)など、ナイト・ドクターの仲間や指導医・本郷(沢村一樹)の思い、キャラクターの心情がドラマチックに描かれて、ここまでの10話の中で最も感動的なエピソードだった。

 

前回のエンディングからの引きで、冒頭から厳しい現実がつきつけられる。発症から時間が経過し、搬送に時間がかかるため、受け入れを断れ、と本郷に指示される美月。苦渋の思いで受話器を握りしめ、要請を断る美月の辛い表情。

どんな患者も受け入れる、という信念を初めてまげざるを得ない挫折。無力感で自責の念に苛まされ、沈む美月を優しく気遣う桜庭(北村匠海)や幸保の気持ちが切ない。

落ち込む暇も無く救急搬送の受け入れ要請があり、15分以内の搬送を条件に要請を応諾して、必ず助けるよ、という美月の一途な熱い決意が胸に響く。

だが、美月たちナイト・ドクターへの試練は続く。搬送が予定より遅れたために、チーム全員での懸命の治療も空しく、患者が亡くなってしまう。最後まで諦めなかった美月も大きなショックを受け、死後の縫合作業中に放心状態となり、その場にいたたまれなくなってしまう。

照明も消えた事務室で一人悔し涙をこらえる美月に、幸保が見かねて声をかけ、涙をみせないように背中を向けた美月を振り向かせ、黙って抱きしめる幸保。二人の目から涙があふれて、じっと抱擁しながら悲しみを分かち合う。

このシーン、ここだけ何度も繰り返し見て、見るたびにたまらずもらい泣き。

最初は相性が合わず、ぶつかってばかりいた美月と幸保が、ナイト・ドクターの厳しい仕事を通して、お互いを深く知り、真の同志となった瞬間。

思い出したのは、昔観た波瑠さん出演の映画「ガール」で、キャリアウーマンの上司役・麻生久美子と部下役・波瑠さんが男性社員との白熱の対決シーンの直後、感情が高ぶってトイレに駆け込んだ麻生由美子の後を追って波瑠さんが抱きつき、二人で黙って泣きじゃくるシーン。ちょうど同じようなシチュエーションで、感動のシスターフッドだった。

波瑠さんのこういうお芝居はもう最高。

 

ドラマの初めの頃のエピソードでも、美月の必死の努力にもかかわらず患者が死んでしまうシーンはあったけど、今回のエピソードではナイト・ドクターの仲間の対応がまるで違う。美月の感情に共鳴し、互いの気持ちを思いやり、そして、同じ救急救命医療への志を新たにする。

エピソード後半での大停電へのチーム総力戦での奮闘は、5人のナイト・ドクターだけでなく、本郷や看護師たちも巻き込んでの、ドラマ全体でもまさにひとつのクライマックス。

近隣病院から殺到する受け入れ要請に、本郷に意志を支えられ、深澤も幸保も、その場にいない美月の思いに心をつき動かされて、受け入れを決意する。その後も重なる要請に、困惑する看護師たちも、美月の登場で皆の心がひとつになり、一斉にチームが躍動し始める。最初はばらばらだった5人が見事に連携し、救急救命センターのチームワークがフルに発揮される、このシーンもかなりの感涙もの。

そして最後は、ナイト・ドクターの存在意義を問う、このドラマのメッセージが本郷の口を通して提示される。救える命を救えなかったその悔しさがあるなら、自分たちがナイト・ドクターとしての成功例になれ、それが亡くなった患者たちにできる唯一の弔いだ、という言葉に、心を打たれ、熱い感情がこみ上げる美月と仲間たち。

嘉島ら昼間の救急医たちにもようやく相応に一目置かれ、夜通しの激務を終えて早朝の病院のエントランスを出る美月たち5人の自覚に満ちた表情の晴れやかさが強いインパクト。

 

でも、このドラマ、5人の終着点はここではない。

解散を告げられた美月たちナイト・ドクターは、この先どうなるのか。

最終話の予告では、チームとしてではなく、5人が個人の救急医として試練に立ち向かう様子が描かれていて、それぞれが一人立ちしていく展開になりそうだけど、この5人の関係がどうなるのか、エンディングがとても気になる。

きっと見応えのある最終話になるものと期待してる。