臓器移植を巡るドナーやレシピエント、その親族の心情がテーマの今回、ストーリーとしては比較的シンプルな展開だったけど、なかなか感動的なエピソードだったと思う。

シンプルなストーリーというのは、何か特別な出来事が起こったということではなく、ドナーカードへの署名を兄に求める深澤の妹・心美(原菜乃華)が発端となって、ナイト・ドクター5人それぞれの気持ちが揺れ動くという、キャラクターの心情描写が中心になっているから。

手術や処置のシーンも、冒頭の心美の緊急手術と輸血がポイントとなるクライマックスでの重症患者への対応ぐらいで、前回と同様、患者側のストーリーは薄く、あまり医療ドラマっぽさはなかったかも。

もちろん、自分としては普通の医療ドラマっぽさなんて、まったく期待していないので、青春群像の人間ドラマ中心で全然かまわないのだけど。

 

人間ドラマという意味では、臓器移植というテーマは、かなり綺麗ごとや理想論に終始しがちかな、と思うのだけど、今回面白いと思ったのは、キャラクターの設定と組み合わせの妙。

これからドナー候補としての意思表示をしようとする心美と、その唯一の親族としてこれに反対する深澤、自分の母親が死亡して実際にドナーとなった美月(波瑠さん)、美月の母親から心臓の提供を受けレシピエントとなった桜庭(北村匠海)という4人の関係は、例によって、ちょっと作為的かもしれないけど、演者の芝居に不自然な感じはほとんどない。

状況をすべて知っているのは桜庭と成瀬(田中圭)だけで、美月は母親の心臓のレシピエントが桜庭であることを知らない、深澤と高岡(岡崎紗絵)は美月の母親のことも桜庭の心臓移植のことも何も知らない。

プロットの展開としては、ナイト・ドクターの5人がお互いの境遇を知り、感情を共有することで、それぞれの気持ちや考え方が変化していく様子を描写するという工夫が、なかなか上手くできてる。

まず深澤と高岡が美月の母親がドナーだったことを知り、桜庭と深澤の喧嘩を経て、桜庭の深澤への謝罪と告白から、彼がレシピエントだったことを皆が知る。最後に屋上での朝食シーンで、レシピエントからのサンクスレターの話を美月から聞き、美月の母親への思いを皆が知る。このシーンの美月の語りの優しく、温かみのある口調に重なって、カメラワークで美月の背後から、美月の言葉に心を震わす桜庭の表情へと視点が移り、その一筋の涙が視聴者の感動を呼ぶ。今回のエピソードの見どころは、まさにここ、かなりの感涙シーンだった。

 

思ったのは、波瑠さんと北村匠海の芝居の相性の良さ。

第3話の桜庭が初めての一人での救命措置の後の美月との会話のときも感じたことだけど、二人の心情の波長が共鳴し、画面のこちら側にも伝わってくるような感覚がして、ドラマの世界に引き込まれ、非常に見応えがある。

実は、北村匠海という役者の芝居を観るのは、このドラマが初めてなんだけど、ミュージシャンということで、何だかチャラくて軽そうな感じ(笑)というような先入観で見ていたけど、かなり良い役者だなと見直した。波瑠さんとの共演ももっと観てみたい気がする。

 

ただ、今回のエピソード、プロットの面白さと屋上での感動シーンという意味ではよかったんだけど、それ以外ではやや内容が単調だった面もある。

特に、ストーリーの中心である心美と深澤のやり取りは、確かにエピソードのコア部分ではあるんだけど、心理面のフォーカスはむじろ美月と桜庭にあるのだから、もう少しめりはりのある演出にした方がよかったかな。そもそも医師である深澤が頑なに臓器移植に反対するのも、いかに妹思いの兄とは言え、いまひとつ説得力に欠け、一本調子な感情表現になっていた感がなきにしもあらず。

ドラマ全体としても、主人公である美月を中心にして、もっとダイナミックにナイト・ドクター5人の関係が変化して行ってもよいかな。

そういう意味では、今回のエピソードも平穏な世界の中で小さくまとまってしまっているような気がしないでもない。

あと、筋肉祭りの下りは、まあ、ドラマの中のお遊びとは言え、何だか尺稼ぎみたいに思えて、ちょっといらない蛇足だったかな(笑)。

いや、ひょっとして、自分のこの感想自体が蛇足かも(笑)。