今回は、ナイトドクターの出来る子の一人、高岡幸保(岡崎紗絵)が主人公のエピソード。

とても自信家で、オンもオフもリア充の、一見順風満帆な彼女も、実は心に秘めた、いや、自分でも見ないふりをしてきた、孤独と不安を抱えている。が、幸保の恋人・青山北斗にべったり寄り添う花園詩織(松井愛莉)が急患で救命救急センターに運ばれてきたことから、幸保がずっと守ってきた理想の自分の形が崩れ始める。

誰にも言わずにいた両親のクリニックのこと、真面目で地味な少女時代のこと、触れられずにいたかった過去を花園詩織に指摘され、あんたってさ、友達いないでしょ、という言葉にショックが隠せなくなる。詩織との確執からトラブルを起こし、感情のままに仕事を投げ出して早退してしまう幸保。美月との間にも、激しい言い合いから、気まずいわだかまりが生じてしまう。

詩織や美月からの心に刺さる言葉に、認めたくなかった自分の弱さと直面させられ、職場放棄してしまった自分の情けなさに涙する幸保の姿が感情移入を誘う。

しかし、ようやく気持ちを落ち着けて職場に戻った幸保は、夜中に詩織が一人で泣きじゃくる姿を見て、自分も詩織も同じ寂しさや心細さを抱えていることに気づく。

詩織を心の病から救おうと、医師としての自覚を取り戻した幸保は、本郷に促された美月からの信頼の気持ちに強く心を動かされる。

一番印象に残ったシーンは、一人で重症患者の処置に苦心している美月のもとに遅刻した幸保が駆けつけてすっと手を添え、しっかりサポートに入る、来るのが遅い、という美月の台詞と、それ以上あえて余計なことは言わずにてきぱきと共同作業する二人の間に芽生えた絆、それがすごく感動的で、何だか目頭が熱くなる。

いやあ、幸保と美月に、花園詩織も含めて、女性キャラクター同士の無言のうちの共感、心のつながりを描いていて、今回も良いエピソードだった。

エンディングの寮の屋上での4人のシーンも、シリアスなシーンとのコントラストと束の間のコミカルな描写で心が安らぐ。

 

今回も波瑠さん演じる美月は、エピソードの主人公ではない分、ストーリーの中心的な役割ではなかったけど、幸保の心情の動きにきっかけを与え、その変化の描写に説得力を加える、プロット上の重要な意味を持っている。そして、その波瑠さんのお芝居が何とも絶妙。

幸保への厳しい問いかけ、じゃあ、本当の自分は?ほんとの高岡はどこにいるの?という台詞の真摯な感情表現、幸保に声をかけられない無言の表情の多弁さ、幸保の書いたカルテを読むときの真剣な眼差し、そして、一番大切なシーン、本郷から幸保の提案への意見を求められ、私は・・・、(やがて顔をあげ、きっぱりと)高岡がそう言うなら、コンサルすべきだと思います、同じ医者として、私は高岡の見る目を信頼します、と言い切る。それに、はっと見返して、目がかすかに潤む岡崎紗絵の芝居との呼吸がもう最高。

うん、これ、正直言って、下手をすると、物語の流れが理に落ちて出来すぎ感が生じてしまう台本ではあるんだけど、キャスト全員の芝居のバランスとハーモニーが非常に良いので、プロットのリアリティーが失われることがない。

 

しかし、考えてみれば、このドラマ、毎回実は同じパターンでストーリーが展開してきている。ナイトドクターのうち一人の悩みや迷いに対して、ちょうどそれと共振・共鳴するような患者側のドラマがあり、患者やその親族から受けた刺激と感銘、そして、ナイトドクターの仲間からの共感と支えによって、エピソード主人公が一人ずつ自分の葛藤を克服していく、その過程で5人の関係が少しずつ深まっていく、という展開。

でも、この同じパターンの繰り返しは決して悪くなく、むしろ、とても心地よい。リズムの統一感というのか、主題の変奏の面白さというのか。

そもそもドラマというのは、ストーリー描写を現実にどれだけ似せるかが重要なわけではない。実際の医療現場の単なる再現ドラマなんて誰も求めていない。

現実にはそんなに偶然に同じパターンで出来事が続くことはありそうにないのだけど、このドラマのストーリー展開は、もともと「あり得ない」のではなく、潜在的には十分に「あり得る」ことを、スタッフ・キャスト含め作り手の明確なビジョンのもとにエピソードを連動させた「創作」として提示している。

また、ストーリーは同じパターンでも、エピソード主人公と美月を中心とするナイトドクターの仲間たちや指導医・本郷との心理ダイナミクスや人間関係というプロットが毎回趣向を変えて提示されていて、それぞれのキャラクターの魅力とも相まって、非常に印象深く、感動的な作品になってきていると思う。

そういう意味では、少なくともこれまでの医療ドラマにはない、非常にユニークで新たな魅力に満ちたドラマではないだろうか。

 

で、いよいよ来週は、5人のうちで最も重い過去を背負ったキャラクター、成瀬(田中圭)のエピソード。オリンピックで中断になる前の前半最後のエピソードだから、後半への向けての最初のクライマックスになりそうで、ますます楽しみ。