やっぱり波瑠さん主演のドラマにハズレはない。

このドラマ、まだ初回だけど、普通に面白く、これからの展開にも期待十分。

で、何と言っても波瑠さんのお芝居が見応えたっぷり、ドラマの世界に引き込まれる。

 

朝倉美月という主人公は、とてもユニークなキャラクター。

医師としての資質、技術やメンタルもしっかりしていて、強い意志と信念を持っている。人の命を救う、という一点に自分の人生、生活のすべてを捧げてしまっているかのような、ある意味、殉教者的な情熱さえ感じる。だから、医師として働く時間以外のプライベートは非常におざなり。恋愛関係もすごく適当(笑)。

でも、これって、ドラマのキャラクターとしては違和感ないのかもしれないけど、現実の人間としては、一種の人格の歪みとも言えるわけで、そこにはトラウマのようなものだったり、心のしこりや固執、迷いや葛藤も、その奥底にはあるはず。強さだけでなく、そういう脆さや揺れ動きを感じさせつつ、オンとオフ、外見と内面の錯綜をきちんと表現している、波瑠さんのお芝居には、いつものようにうーんと唸らされ、また新たな魅力に心を奪われる。

一言で言えば、すごくかっこいい、だけど、外見的なかっこよさだけじゃない、内面的な美しい心の温もり、それがこのドラマのコアになるんじゃないか。

朝倉美月という役名も、かなりベタだけど象徴的。

明るい希望の朝をじっと待つ、寂しく暗く長い夜、傷つき、苦しむ人々の孤独と孤立、それに優しく寄り添うように、静かに照らす美しい月のように。

キャラクターとしては、ちょうど「あさが来た」のあさちゃんと通じるところがあるのも何だか奇遇。そして、何故かまた「みっちゃん」(笑)。

 

また、このドラマ、青春群像医療ドラマ、ってあまり耳慣れないカテゴライズだけど(笑)、ナイト・ドクター5人の人間関係がプロットの中心になっているってのは、これもかなりユニークだと思う。その群像劇の中軸=ハブとなって、ドラマをドライブしていく、そういう熱量とパワー、インパクトを持った主人公としても、波瑠さんのお芝居は初回からもう期待感たっぷり。

 

ところで、自分は医療ドラマをほとんど見ないので、このドラマが他の普通の医療ドラマと比較して、ストーリーや演出に特筆すべきことがあるのかどうかは分からない。

そのあたり、SNSでの視聴者の感想やコメント、ネットの記事やレビュー見てると、まあ、賛否両論いろいろあるみたい。展開や設定がベタで、先が読めて、新鮮味がないとか、医療ドラマとしての傷病・処置・治療の演出等々への注文とか、キャラクター描写への不満とか。

でも、自分は、このドラマを医療ドラマの観点から見てはいないので、そういう感想や意見はまったく気にならない。

逆に、自分はこのドラマに、例えば「コードブルー」なんかと比較して、医療従事者の現場のインサイドストリー、分かりやすい一話完結型の、難病や重度の外傷という課題解決・難局克服ドラマ、よく世評にあるような、豪華俳優のメインキャラたちが各自の個性や特技を生かして活躍する、いわゆる戦隊シリーズやアベンジャーズみたいな集団ヒーローもの、視聴率稼ぎの、そんな凡庸・陳腐なドラマはまったく期待していない。

そういう意味では、第1話を見る限り、普通の医療ドラマみたいな、患者側にドラマがあって、医師側にはドラマがない、という展開ではなかったので、とりあえず安心(笑)。

 

第1話は、主人公・美月というキャラクターを過不足なく表現しつつ、メインキャラ5人のちぐはぐさやそれぞれの危うさや不安定さ、そしてそれらを背景にエピソード主人公の深澤(岸優太)の不安や迷いを描き、普通の医療ドラマとは違う独自のビジョンや方向性を予感させるような展開で、なかなか上出来だったと思う。

 

ただ、この先は、世間一般が期待しているような、いわゆる普通の(戦隊シリーズ的な(笑))医療ドラマ、つまり視聴率や世評を考えたら、そういう期待にも応えなきゃという作り手側へのプレッシャーと、このドラマが本来持っている潜在的な独自のテーマ、メッセージとのバランス、それが難しくなってきそうな、そんな心配もなくはない。

「バランス」というと聞こえはよいけど、それは悪くすると「中途半端」ということでもあり、ドラマのビジョンがぼやけてしまうことにもなりかねない。

まあ、普通の医療ドラマが嫌いな自分としては、世評も視聴率も一切気にせず、作り手が作りたいようにやってもらえたら、と思うんだけど、いや、無責任ですみません(笑)。

 

いや、きっと、そこは主演が波瑠さんだし、そもそも波瑠さん演じる美月を主人公にしたってところが、他の凡百の男性主人公の医療ドラマとは一線を画している。それぞれ、悩みや迷いや葛藤を抱えた5人の医師たち、そして夜という、孤独や孤立や不安、苦しむ患者たちの命と心を救う、その一点で結びつく、精神的な共感と共鳴、それを体現するのが美月という主人公なのだと思えば、単純な「成長」や「達成感」で終わるドラマにはならないだろう。

そういう意味では、この第1話での深澤の問いかけ、「成長したその先に何があるんですか」という台詞がとても印象的だった。

第2話以降に大いに期待が高まる。