あーあ。なんとなく予想していたこととはいえ、やっぱり、このシリアスな展開はつらいなあ。

お互いに好き合ってる美々先生と青林の気持ちのすれ違いが何とも切なく、心が痛い。

表面的には大事件というほどのことは起こっていない。ただ、二人でキャンプへ行って、一緒に流れ星を見て、それだけだった、というだけ。だけど、恋愛下手なこの二人にとっては、お互いへの期待と不安が空回りして、言葉がよけいだったり、逆に足りなかったり、距離が近すぎたり、逆に離れすぎたり。

 

恋愛下手と言ったけど、ほんとは不器用というより、二人ともすごく真面目なんだろうな。

美々先生はもともと人付き合いが苦手で、心の声が多め、SNSだったら上手くやれてたことが、リアルな言葉を口にすると、気持ちとうらはらになったり、逆に気持ちを入れ込みすぎたり、気持ちより先走ってしまったり。吐き出せ、わたし、という自己プレッシャーも無理につながってストレスの一因になってるはず。おそらく心のどこかで、青林に自分をもっと伝えなきゃ、でなきゃお互いに深くは知り合えない、これまで世間からずっと先入観で見られて、知らず知らず距離をとって一人ぼっちだった、はじめて自分をありのまま受け止めてもらえて、心を許せるこの人を失いたくない、って健気な一生懸命さに泣けてくる。

他方、青林も常に相手の心に沿って、共感する優しさがありながら、気持ちの動きがマイペースで周囲とタイミングが合わず、心も体も反射神経に乏しくて、空気が読めないとか、鈍感とかいうことになってしまいがち。いつも他人のことを先にして、自分のことは後回し、で、自分の感情をしまいこんでしまうこともたびたび。美々先生の円形脱毛症=ストレスに気づいてあげられなかった自分を責めたり、五文字に嫉妬している自分を責めたり、恋愛を義務や責任のように感じてしまう。

お互いに真面目だから、世間流に恋愛を軽く流すとか、ゲームのように楽しむ余裕などない。

「普通の恋」のように、テンプレートに合わせて、甘えたり、わがまま言ったり、気持ちを押し付けたり、わざと困らせて相手を試したり、おおっぴらにやきもち焼いたり、どさくさまぎれに濃厚接触したり(笑)、そういうことはできない。この二人にとって、それは「邪道」なんだ。

でも、そんな二人だから、きっとSNSがなければ、恋に落ちるなんてこともなかった。それは、やっぱりこのドラマのテーマが「リモラブ」である所以。

 

あと、一般のドラマ視聴者の感想とか見てると、青林がうじうじしてるとか、女々しいとか、非難する声もあるようだけど、自分はそれには賛同できない。

そもそも「女々しい」って言葉が自分は大嫌い。この言葉、女性を侮蔑してるし、男性に対しても「男らしさ」を強要する酷い言葉だと思う。だいたい「男らしさ」なんて百害あって一利なし。この地上から殲滅したい(笑)と思ってるくらいだから、そういう意味でもやっぱり「普通の恋は邪道」。典型的な、男はつらいよ、でも、やせ我慢、常に女性をしっかりリードして、誠実に抱きとめて、みたいな、そんな理想の男性像はそもそも大間違い。そんな奴この世にいないし、男なんて、根はみんな強欲で、自分勝手で、女性を狩りの獲物とか、車と同じような自分のマウンティングのための道具としか思ってない。恋愛ドラマに理想の男性像を求めるって、そりゃ、ファンタジーだからありってことなんだろうけど、そういう価値観に染まってたら、本性は厚かましく図々しい男どものまんまと思うつぼ。そういう邪道の恋からは卒業しないと。

そういう意味では、この青林というキャラクター、実在はしそうにないけど(笑)、なかなか味のあるキャラクターだし、松下洸平というキャスティングも絶妙。

 

まあ、あれだよね。

ラブコメって、つまり恋愛は、当人たちが真面目になればなるほど、周りからは滑稽に見える、ってそういうことなんだろうな。つまり、このドラマこそラブコメの王道。

特に、今回は、エンディングの波瑠さんと松下洸平のお互いを責めてしまうようなシーンが心に染みる痛々しさ、涙ぐましさ。波瑠さんのお芝居は、ちょうどこのドラマと同じスタッフの「セカムズ」のアホベッドの回からステイゴールドホテルへの転職の回のときのように、素で怒って、素で悲しんでいる、心をぎゅっと締め付けられる真剣な心情描写。

で、その分だけ、テロップでの突っ込み(笑)「#これはラブコメです」が大受け。予告の二人の、何でもないような顔した、来週もお楽しみに、で我に返って、ほっとする(笑)。

 

それにしても、今回は、八木原と栞のバカップルも、浅鳴部長と富近先生のしっとりした関係も、それぞれ切なくも心温まる展開でここへ来てサイドストーリーもなかなか見応えあり。鳩マジックの下りには爆笑したし、江口のりこのこんな恋愛表現なんて、はじめて見て、ぎこちなさもかえってはまってるし、いいじゃない、こういうのもなかなか。

また、五文字の描写も、他人の気持ちには敏感な割に、自分の気持ちは遠慮なく、ストレートに表に出てしまいがちな、それが美々先生と青林のぎくしゃくした関係の潜在要因としてリアルにつながっていく、そういう仕掛けが非常に効果的にできてる。

そう考えると、今回は脚本もかなり上手いなと思った。

 

いよいよ残すは明後日の最終回だけかあ。

波瑠さん主演ドラマでは、いつものことだけど、主人公キャラともこれでお別れ、美々先生と二度と会えなくなる、それだけでもう泣きそう。せめて美々先生の美しい笑顔が良い余韻となって残るように、とびきりハッピーなエンディング期待してる。今回ここまでシリアスにしたんだから、最後はうんとラブコメ満喫、ってお願い。