「あんた誰!?」

美々先生の最後の台詞と驚きに満ちた狼狽の表情がもう最高(笑)。

まー、美々先生と五文字がソファに座ってオンラインゲームに興じているうち、だんだんいい雰囲気になってきてるときに、かたやレストランで一人ぼっちの青林がスマホを取り出したシーンで、あー、これ、檸檬から草モチにメッセージが来て五文字の嘘がばれちゃって、で、きっと最後のオチは「あんた誰?」じゃないのか、って想像して画面にのめり込んでて、我ながら予感的中だったんだけど、薄々分かってても実際にそうなるとやっぱり爆笑。

いやあ、ほんと面白いドラマ。

ここのエンディングまでの波瑠さんのお芝居、部屋で二人きりになって、たどたどしい恋愛の始まりのような、お互いの気持ちが少しずつ近づくしっとりしたやり取りとか、楽しそうに一緒にゲームする姿とか、ボスを倒してクリアした直後、ふいに静かになって気まずいながらも急接近する二人、これは何ですか?あれですか?というキュートな心の声とか、最後の台詞の直前、突っ立ってる美々先生を見上げて嬉しそうに微笑む五文字の表情とか、そういうロマンティックな展開から一気に崖を滑り落ちるギャップが絶妙なんだよなあ。

 

前回までは、かなりコメディーよりでギャグ多め、美々先生もボケまくりのイメージだったけど、今回は、ま、ギャグの楽しさは相変わらずにしても、恋に揺れる美々先生の乙女心とか、檸檬とのリモラブを懐かしみ、リアルな恋愛に真面目に向き合おうとしつつも、なかなかなじめない困惑の様子とか、恋愛ドラマの雰囲気が濃厚な印象だった。

 

今回の冒頭では、居酒屋おとで五文字から交際を申し込まれて、テーブル席のアクリル板を挟んで相手をじっと見て、自分の気持ちを正直に語る美々先生、戸惑いやためらい、はにかみやときめき、そんな感情が入り混じった波瑠さんの目のお芝居、なんて素敵なんだろ。

と思ったら、電話での会話、リアルな声でおやすみなさいの言葉を聴いて、檸檬との思い出にそれが重なり、何とも優しい顔になる美々先生、デートのお誘いに思わずにんまりと嬉しさがこみ上げてくる寝姿のこの上ない可愛らしさ。

で、また今度は久しぶりの恋愛にうきうき浮かれてしまって、突然少女のようにきゃぴきゃぴになってみたり、例によってへんてこ体操からのムーンウォークだったり(笑)、つられて踊る富近先生と八木原へ、勤務中ですよ!の逆突っ込みだったり、コメディーモードも全開。

ところが、実際にデートとなると、行先探しも衣装決めも、不慣れなことには集中できず、面倒くさくなってだらだら、疲れてしまう美々先生。デート当日も不自然に力が入ってしまい、無理してる感がありあり、イルカのカチューシャつけて疲労困憊なのが、またすごくキュートなんだけど、逃げ帰って家でネット配信番組見て、一人のシーンのおでこを出した波瑠さんのビジュアルの美しさはもう絶品、そのリラックスぶりがほっこり、思わず感情移入してなんてほほえましいこと。

そして、一方で、朝鳴や富近先生との会話で、デジタル社会の心の闇という問いを投げかけられ、真面目に考え込む美々先生、現実の人間と正面から向き合うことが大切、でも、それがなかなか上手くできない、気持ちが動いていかないもどかしさ、ジレンマを抱えた浮き沈みが、実感としてじわじわ伝わってくる。家に押しかけられての無理やりダブルデートで、困惑しながらも、誰にも誠実に、傷つけないよう気づかいする美々先生、ドSの独裁者という外見とはうらはらの、内面の心優しさの描写がとても素敵。

 

こういう主人公の、表情がくるくる変わって、かなり挙動不審な、有為転変するキャラクター描写とか、下手するとキャラ変とか、キャラ崩壊とか、ストーリー展開に説得力がなくなってしまいかねないんだけど、波瑠さん演じる美々先生に限っては決してそんなことがない。

 

美々先生の場合は、当初の番宣告知でのキャラクター紹介よりも、実際はずっと真面目で優しく誠実な人柄、でも、対人コミュニケーションが苦手で、それがなかなか表に出てこない。

そもそも男性を食べ物に譬えるのが習い性になったのも男にふられた失恋がきっかけ。ビジュアルの美しさもかえってあだになって、高嶺の花と思われがち、先入観を持たれて、それを裏切れない、自分の気持ちが伝わらない、その失望や幻滅が怖くて、人間を人間として見ることから逃げてきた。壁を作って、自分ひとりの世界を大切に、居心地の良いその世界が壊れそうになるのをずっと守ってきた。恋愛しないのは、自分にふさわしい男がいないだけのこと、いずれ極上のステーキがおのずと目の前に現れるのを待ってるだけ、そういう自分でも意識しない強がり、心にもないプライドをまとってしまってきた。そういう心のこわばりが「健康管理室の独裁者」をつくってしまっていた。

その心のこわばりが、檸檬とのSNSでのやり取りを通して、少しずつほどけていく、リアルの世界でも、周囲の人々との垣根が崩れてきて、氷が解けるように、キャラクターが緩んでいく。それは、ときにすごく情緒不安定ですごく滑稽に見える。でも、それが美々先生の心の解放にとっては、とても大切な一歩になるんだ。

そうやって見ると、SNSだからこそ、人間関係の展開のきっかけになる可能性があるということ。あるいは、SNSだからこそ、良いケース悪いケースそれぞれあっても、隠れていた素の自分、自分が本当に望んているもの、それが表に出てくる可能性があるということ。そんなことを考えさせられる。

って、何だか大真面目な感想、いやいや、これ、コメディーなんですけど(笑)。

 

それにしても、こんなことをつくづく思わせる波瑠さんのお芝居はやっぱり素敵。いつもそうなんだけど、特に、今回のドラマはコメディー中心のボケ要素満載なのに、美々先生の魅力的なパーソナリティーの表現がまったく破綻せず、しかも、ストーリー展開が予測不能でますます面白く、美々先生が物語の中心で渦を巻いてドラマを引っ張っていく、その存在感と作品全体を包む明るく楽しいオーラが素晴らしい。

 

ストーリーで言うと、これまでの美々先生のスタンスから言えば、対極にあるような、箸にも棒にもかからないはずの、とんかつの横のしなびたキャベツこと、檸檬こと、青林との恋(?)の行方、SNSとリアルの相反と共鳴、美々先生だけでなく青林含め登場人物それぞれの気持ちの変化、あるいは心の成長(?)、そして、何と言っても、そこへ至る過程の紆余曲折の右往左往やどたばた(笑)、それにもしかすると切ないロマンスも(笑)、楽しみな要素がてんこ盛り。

 

いやー、思わず感想もとりとめなく長々書いてしまって(笑)。

他にまだ書きたいこともいっぱいあるけど、インド飯ジャーニーだったり、美々先生が博多出身だったり、これ、サバイバル・ウェディングへのオマージュ(?)とか、ま、その他思いついた感想は次回以降にとっておこうかな(笑)。