最終回直前のクライマックス。

ママ、・・・やめていい?・・・あなたの娘を、やめていいですか?

ここでタイトルコール来たか。そうか、これが美月の想いの行きついたところか。

今回は、美月と顕子との感情的な対決が凄かった。観ていて、気持ちがピリピリするというか、緊張感と切迫感でなぜか逆に不思議と可笑しくなったり、一方で終始ずっと目頭が熱くなりっぱなしだったり。

特に、家の受け渡しのシーン。美月と顕子が二人きりになってから、はらはらしどおし。他愛もないままごとのやり取りから、顕子がこの家で一緒に住むと言い出し、美月のどうしようもない悲しみと顕子の一方的な想いとの激しいぶつかり合い、感情の激突となるまで、画面にまさに釘付け。いやあ、これ、ある意味、母娘関係の描写という意味では過去に例がない、ドラマ史上に残るシーンになったと思う。

顕子が部屋のドアを塞いで、確かに「出口なし」って暗喩なんだろうけど、美月にとっての出口という意味以上に、本当は顕子にとっての出口、つまり心の持って行き場が見つからない、ってことなのかもしれない。

 

今回で美月は確かに成長した、と思った。成長って、他人に頼らない自立ってこと以前に、もっと肝心なのは「自覚」ってことなんだ。

学校での事件やその後の展開、礼美やその母親とのやり取り、文恵からの忠告や助言、そして松島との関係、そういう中から、自分がどういう人間なのか、客観的に見つめることができるようになった、と思う。松島を利用している、という自分勝手さを認めることや、教師としての資質への疑問についても、すべて自覚の証拠。

だから、顕子との感情的な対決にもひるまずに立ち向かうことができるようになった。

 

でも、悲しいのは、美月には顕子の気持ちに対する思いやりが残ってしまっていること。憎めたら楽なのに、という想いは、つまり、相手の気持ちに思いやりを持ってしまった方が負け、ということ。顕子が考えを改めた、という言葉を信じたくなってしまうのも、松島に大丈夫かな、と尋ねて、大丈夫という返事に安心を感じてしまうのも。

そういう意味では、顕子との勝負は、はじめから美月の負けが見えている。でも、そうであっても、必死に顕子への想いを振り切ろうとする、最後のシーンが、一層切なくて、愛おしくて、心にすごく重く響いてきた。

 

最終回は、美月がいったん顕子のもとへ戻る展開になるそうだけど、まあ、そこで終わらないことは確か。でも、どういう結末になろうと、大団円のハッピーエンドでない限りは、どんなエンディングもあり。

ここまでで既にドラマとしてはほぼ完成し、成功している。

いずれにせよ、誰もが何かの犠牲を払わなければならない。

「人形の家」というサブタイトルも、んー、ほんとにそうなるとは。この含意もちょっと複雑。

感動のエンディングを期待すると前に書いたけど、いや、それよりは余韻のあるエンディングの方がこの「リアリズム」のドラマにはふさわしいだろう。

美月やドラマの登場人物たちのこれからに思いをはせられるような、そんな終わり方がいい。