波瑠さんにとって女優としての転機となったという記念的な作品。
公開は2009年8月だけど、映画の撮影は2008年の9月~10月だと思われるので、波瑠さんはまだ17歳だから高校2年生。セブンティーンのモデル時代。
本人のコメントで、芝居が全然できず、レベルが低すぎて監督の要求に応えられなくて、とあったので、波瑠さんにとっても課題の残る内容だったのかな、などと勝手な先入観があった。いまいちかもしれないな、とあまり期待しないで、レンタルDVDで観たら、予想外に感動的な作品でびっくり。
なんだ、素晴らしいお芝居じゃないか、しかもすごく良い役もらって。
いや、すごい熱演。厳しい撮影だったみたいだけど、波瑠さん、頑張ったなあ。
映画のストーリーは、スランプに陥っている主人公の漫画家が、自分の少女時代を回想して、故郷を訪れ、いつも三人で一緒だった、かけがえのない友達の話を描こう、と思い立つというもの。
現在の主人公・菜都美を演じているのは深津絵里だけど、映画は大半が少女時代の回想シーンなので、高校時代の菜都美(なっちゃん)役の大後寿々花が実質的な主役で、その友達きみこ(きいちゃん)役の波瑠さん、同じく友達みさ役の高山侑子の三人が中心のドラマと言っていい。
波瑠さんが演じたきいちゃんは、この映画の準主役とも言える重要な役だと思う。
恵まれない境遇にもめげず、成長するにつれて辛いことばかりでも、いつも明るくふるまって、友達と三人で過ごす時間だけは楽しく美しく、精一杯頑張ってる姿を見てると、ほんとに不憫で健気で、いたたまれなくなってくる。
クライマックスでのなっちゃんとの激しい喧嘩シーンは、もう圧巻。友達にぶつける、心の底からの優しい思い。ここからエンディングまで、ずっと涙が溢れてとまらない。
奈都美の乗ったバスに手をふる最後のシーン、きいちゃんのことがあまりに愛おしく、ぼろぼろ泣いてしまった。
波瑠さんへの贔屓目も勿論あるだろうけど、この映画の感動の半分くらいは、きいちゃんにあるように思う。残り半分が、現在の菜都美と高校時代のなっちゃんとみさちゃん。
いやあ、本当によかった。しみじみとしたよい映画だと思う。
でも、きいちゃんが波瑠さんでなかったら、ここまで感情移入して泣いたりはしなかった。
十代のときに、もうこれだけのお芝居をしていたなんて、うーん。
今の波瑠さんとは雰囲気がまったく違うけど、そこにいるのは紛れもなく波瑠さんで、まだちょっとどこか硬かったり、ぎこちない感じもあるけど、もう見ることはできない、十代の少女だけの瑞々しい輝き。そのこと自体がある意味ノスタルジーで、映画のテーマやきいちゃんの儚いイメージとぴたり重なって、胸がつまりそうになる。
結局、レンタルではもの足りず、DVDを買って、何度もリピートして見てる(笑)