何よりも大切なもの

Shay Cullen

2022年2月18日

 

我々はこの世界で多くのものを所有し、それを大切にしている。だが、大多数の人にとって何よりも大切なものがひとつある。あなたにとってそれは何だろうか。愛、金、金銭、安全、平和、家族、それとも幸福だろうか。

 

どれも貴重なものではあるが、何よりも大切な“それ”がなければ、我々はその他の物を手にすることは一切できない。そして我々は“それ”があることを当然のことと思っている。いつでも手に入ると思っている、その最も大切なもの。それは水である。

 

サンバレス州の人里離れた村々に暮らすアエタ族を訪問し、植林や水源を確保する活動に参加するとき、長い距離を歩くことがある。そして私はすぐに水筒に手を伸ばす。水筒が空になると不安に駆られる。人間は、水がなければ2日、長くても3日間しか生きられないことを知っているからだ。

 

人体の60%は水であり、残りの40%の機能を維持するためにも、体内に水分を補う必要がある。水は生命に不可欠であり、信じると信じないとにかかわらず、今日の世界では清潔な飲用水が絶対的に不足している。

 

20年前、私が住んでいた町には流れる川から十分な水を手に入れることができた。貪欲な政治家たちによる木々の伐採や環境破壊により、その川の水量は激減した。木々がなくなると、水もなくなる。その一方で、大気中の二酸化炭素は増え、地球温暖化や気候変動を引き起こす。地球は70%が水でできている。

 

広大な海が地球の大半を覆っている。魚にとってはいいことだが、我々人類には塩分が多すぎて、飲むことはできない。だが、海は、気候を左右する極めて重要な存在である。

 

地球温暖化によって、海水が蒸発する速度は加速し、その量も増加している。その結果、水分を大量に含んだ巨大な雲が発生する。温められた海水は海流の向きを変え、高温になった大気は上昇し、下降する冷気と混ざり合う。それによってより強力で巨大な台風やハリケーン、暴風雨がより頻繁に発生するようになる。こうした現象が現在世界中で起きている。

 

これが、アフリカの一部を除く世界の至ることろで大洪水が発生している理由である。アフリカの一部では、より深刻な旱魃に人々は苦しんでいる。地球温暖化により、地上や河川の水が蒸発してしまうからだ。水がなければ作物は育たず、次にやってくるのは飢餓である。

 

さて、我々人類は、地球上のほとんどの生物より賢く、聡明である。より大きな脳と知性を備えているはずである。人類の多くは心から善良であろうと努め、他者のために良い行いをし、困っている者に救いの手を差し伸べることを厭わない、正直で、慈悲深いまともな存在であろうと努力している。だが、地球をも愛し、地球や人類、動物、自然界を救うためにより積極的に力を尽くし、行動を起こさなければ十分とは言えない。

 

全人類が生き延びることを考えたとき、おそらくそうはならないだろうが、我々に必要なのは、人としてのより大きな思いやりや共感、分かち合い、平和的な共存である。さらに、政府や大企業に、地球を汚染するような行為をやめ、石炭や石油、ガスの燃焼から、再生可能なエネルギー源の開発へと方向転換するようする圧力をかけることである。

 

地球温暖化により、世界中の池や貯水池の水は蒸発し、山々の氷河は溶けている。食物を育てるための灌漑に必要な水は、かつてないほどに減っている。そして、旱魃が延々と続くことになる。気候変動は雨量を変えた。飢えに苦しむ人々や命を落とす人々の数は増え、若者は、水や仕事、食べ物を求めて北へと移動する。

 

差別主義者や意地の悪い人であれば、移動してきた人々を歓迎することはせず、新たにやってきた人々に怒りを覚えるだろう。この貧困の責任は、豊かな国々だけが負うべきかもしれない。豊かな国々は、植民地時代や新植民地主義の時代から現在に至るまで、貧しい国々を継続的に搾取し続けてきた。それにより、アフリカはどこよりも大きな打撃を受けている。

 

多くの人々が飢えに苦しみ、栄養失調によりまず命を落とすのは子どもたちである。貪欲な大物実業家や政治家の取り巻き連中が天然資源を搾取し、アマゾンや残されたアフリカの熱帯雨林を破壊しているからだ。フィリピンでも、残された3%ほどの熱帯雨林で違法な森林伐採が行われている。1903年には、フィリピン国土の70%が森林に覆われていた。資産額上位1%に位置する国際的な超大物実業家や経済界の有力者たちの資産は、5年前に比べ、およそ倍になっている。

 

我々が生き延びるには、地球の温度上昇や水の減少を食い止めなければならない。我々は変わり、良い行いをしなければならない。簡単な方法の1つは、ありとあらゆる場所に木を植えることである。地方を訪れる際に、2年ほど育てた果樹の苗木を手土産にし、近隣に植えることもできる。想像してみてほしい。もしフィリピン人全員がこれを実行したら、相当数の木々が毎年植えられることになる。そうすれば、二酸化炭素を減らし、地球の温度上昇を食い止める一助となることだろう。

 

開発支援は森林再生を中心に行われるべきである。熱帯雨林を守り、再生させることで、水源の改善を図り、その水源を最大限活用するのだ。都市部には、排水をきれいな水に変えるための水の再生施設がもっと必要である。

 

地球が直面している気候変動による惨事は、地球の歴史において最も深刻な状況となっている。我々の多くは、秩序なく、現実を受け入れることもなく生きている。愚かで、無意味な日々を送り、石炭や石油、ガスを燃焼することで環境を破壊するようなライフスタイルで生活している。我々は、太陽光や風力、地力、波力を利用することもできるのだ。科学者たちが、問題解決へ向けて、混合型の発電所を開発してくれることを願う。

 

我々には植林という手段がある。筆者も、先住民族であるアエタ族の人々と一緒に毎年2,000本のマンゴーの苗木を植えている。我々は、周囲の人々の環境に対する意識を高め、善良で責任ある行動をするよう促し、自らそのように行動をすることで、特に若い人たちに見本を示すことができる。自分の子どもや孫たちを連れ、一緒に植林に参加し、あるいは、先住民族のアエタ族の人々に苗木を贈ることができる。アエタ族の人々はその苗木を植え、先祖代々の土地の改良に役立てることができる。

 

原文:https://www.preda.org/2022/the-most-precious-of-all/