被害を受けた子どもたちを救出する者たちが、子どもたちを虐待

Fr. Shay Cullen

2021年9月10日

 

人身取引は最も邪悪な行為であり、貧しく、無知で、弱い立場に置かれた子どもたちを標的にする。そうした子どもたちは、堕落した大人たちにいいように手懐けられ、誘惑され、洗脳される。そして、金銭とセックス、薬物まみれの生活こそが、手にし得る刺激的かつ最高のものだと信じ込まされてしまう。

 

子どもたちは映画やネット上で恵まれた生活を目にしたり、友人から話を聞いたりしている。売春斡旋業者や人身取引業者はFacebook上をうろつきながら、小児性愛者や児童性的虐待者に性的虐待目的で売り飛ばすのに適した子どもを物色している。管理の行き届いていないFacebookは、子どもたちにとっても大人にとっても極めて危険な存在である。Facebookや類似のプラットフォームが人々の好奇心を刺激し、子どもたちを虐待させ、人身取引を可能にしている。フィリピンのPLDTやSmart、Globe、Ditoのような電気通信会社が運営するインターネット・サービス・プロバイダー(ISPs)は、その責任を負うべきである。こうした会社は、児童性的虐待画像が自由に送受信されるのを許可しており、そのような虐待画像によって、子どもたち、そして大人の心や精神が蝕まれていく。児童性的虐待画像に刺激された小児性愛者たちは、実際に外へ出て、子どもたちを性的に虐待する。

 

これが、児童性的虐待という犯罪の本質である。上記の会社は、制限ソフトのインストールを義務付けるフィリピンの法律(共和国法第9775号)を無視している。彼らはこの法律に従わず、その結果、子どもたちは手懐けられ、ネット上や実際に虐待される。Apple Corporationは、iPhone上の児童性的虐待画像を探知できるソフトを用意していると話している。そのような画像を探知し、制限し、画像をストックしている虐待者を通報できる。フィリピンのISPsは同様のソフトを使用すべきだ。Microsoftもそうした技術を用い成果をあげており、子どもたちを救い、守っている。だが、こうした動きに反対する者もいる。彼らは、そのような技術を政府が監視目的に使う可能性があると主張している。これは間違いである。Appleはこの技術を自社の使用に限っており、その対策もできている。素晴らしい行動であり、我々が望むべき行動である。

 

最近起きた実話をご紹介する。人身取引の被害にあった子どもたちの救出者と呼ばれる者たちによる人身取引および児童虐待の話である。すべてはFacebookから始まった。Facebook上のやりとりは管理されておらず、小児性愛者や児童性的虐待者たちにとっての狩場となっている。ここでは子どもたちが獲物となり、手懐けられ、洗脳され、誘惑される。そして、自分を褒め、好きだと言ってくれる誰かに、いとも簡単に“恋に落ち”てしまう。これがLisa(13歳、仮名)とJosie(15歳、仮名)に起きたことである。彼女たちは偶然、性的に露骨な画像を目にし、性行為に関心を持つようになった。

 

13歳のLisaは、姉のAnnaとその友人のJosie(15)から連絡を受けた。人身取引業者のMonicaは、客と性行為をすることで金を稼ぎ、薬物や便利な雑貨を手に入れることができるという話を2人に持ちかけた。Lisaは児童性的虐待画像を閲覧し、ネットでセックスパートナーと話をしていおり、すでに状況は整えられていた。管理が不十分なインターネットのおかげだ。LisaはAnnaとJosieと一緒に行くことを決めた。Monicaと仲間の男たちと会い、セックスパーティの計画を立て、その後、裕福な外国人客と会うことにした。顔を合わせる場所にRico‘s Restaurantを選び、人身取引業者のMonicaが手配した。そのレストランでMonicaは仲間の男たちと打ち合わせをした。彼らはホテルまで一緒に行くことになった。そのホテルにはプールがあり、女の子たちはそこで客と会い、性行為を行った後に支払いを受けることになった。

 

このパーティを計画した男(Nixonと呼ぶことにしよう)はRico‘s Restaurantでの打ち合わせを段取りし、国際的な慈善団体の寄付者が提供した資金の入った袋を開け、自分が金持ちであることを女の子たちに示した。彼女たちはその金につられ、パーティへの参加と客との性行為に合意した。その時、Nixonと2人の仲間の男が、まずは女の子たちを試すために自分たちが彼女たちと性行為を行いたいと言い出した。その同じ日に、男たちは未成年の女の子たちをホテルへ連れて行き、性行為に及び、金を支払った。19歳のAnnaも性的虐待を受けた。高級ホテルでのパーティは数日後に開かれた。プールで泳いだ後、女の子たちは部屋の中で再び同じ男たちに会い、そこでNixonは、女の子たちへの金の支払いをMonicaに申し出た。Monicaは、Annaに自分のためにその金を受け取るよう迫った。

 

数分後、Monicaと仲間の2人の人身取引業者をはじめ、その場の全員を逮捕するために、National Bureau of Investigation (NBI)の職員がやってきた。LisaとJosieは未成年だったこともあり、政府のソーシャルワーカーに引き渡された。NBIの事務所に連れられてきた女の子たちは、そこで、レストランで彼女たちと会い、パーティを計画した男たちの1人を目にした。女の子たちは、パーティを計画した3人の潜入捜査官たちはNBIの職員だと思っていた。だが実は、その潜入捜査官たちは、子どもの救出活動を行う国際慈善団体の関係者であり、人身取引業者から子どもたちを救出し、取引業者を逮捕へと導く専門家だった。だがこの潜入捜査官たちは堕落しており、国際慈善団体から資金援助を受けた救出活動の最中に、未成年者のLisaとJosie、そして19歳のAnnaに対して性的虐待を行なっていた。女の子たちは、潜入捜査官たちが自分たちに性的虐待を加えていたことに憤慨した。彼女たちは現在、自分たちを虐待したことについてこの潜入捜査官たちと慈善団体を相手に刑事訴訟を起こす準備を進めている。

 

この国際慈善団体は、Philippines National Policeへの文書の中で、団体の関係者が未成年者に対して性的虐待を行なっていたことを認めていた。だが、この団体はその評判を維持するために、潜入捜査官の存在を否定し、聞いたこともないと話し、名前による確認作業への協力を拒んだ。子どもの救出活動を行うこの慈善団体は、問題の潜入捜査官らがこの団体の活動を行なっていたことを否定している。これは極めて無責任な態度であり、この団体がモットーとしていることとは完全に矛盾している。さらに彼らのこうした態度は、彼らが守り、救い出すべき子どもたちに対する裏切りである。

 

オロンガポ市NBIの ChiefであるAttorney Orlando Navalloは、誠実かつ正義のために力を尽くす人物である。彼は、児童虐待者らを捕まえ、虐待者とその協力者に裁判を受けさせることを誓った。さらに捜査を進め、全員の身元を特定すると話している。潜入による別の救出活動によって、パンパンガ州で同慈善団体に救出された別の子もまた、潜入捜査官から性的虐待を受けたと訴え出ている。これは無慈悲なまでの堕落だ。悪事は暴かれ、容疑者は特定され、裁判にかけられなければならない。それこそが、人身取引や虐待の被害を受けたすべての子どもたちのために我々がすべきことである。

 

原文:https://preda.org/2021/rescuers-of-child-victims-abuse-them-too/