虐待を報告することは、電話をかけるのと同じように普通のことであるべきだ

Fr. Shay Cullen

2021年7月31日

 

この記事の読者の多くは、犯罪の被害者である子どもに思いを寄せる善良な人々であり、子どもたちが虐待を報告する手助けをしたい、どうしたら支えになれるかを知りたいと思っている。子どもが不機嫌で、落ち込み、悲しみ、何も話さず、怒りを感じている場合、あるいは子どもがスカートをまくり上げたり、下着を下ろすような性的に思わせぶりな行動をとるような場合、誰もがすべきことは警戒し、疑問を持ち、関心をよせることである。その子は何らかのメッセージを送ろうとしているのだ。その子が性器に痛みを感じていたり、何らかの分泌物がある場合には、すぐに診察・検査を受ける必要がある。

 

社会は目を覚まし、人間性の多くの部分が堕落してしまったという恐ろしい真実を受け入れなければならない。4人に1人の子どもが性的虐待の被害にあっている。5分に1人が虐待を受け、事件のほとんどが報告されないまま繰り返される。子どもたちはまず、仲の良い友人に話すだろう。助けを必要とする子どもは大勢いる。

 

被害を受けた子どもたちを支えるために、精神分析医である必要はない。友人として、相手を理解しながら話に耳を傾けるだけでいい。真に善良な人間でありさえすればいい。子どもに友情を示し、心を開き、信頼し、何かあったら話すよう背中を押すだけでいい。もし何か起きたのであれば、その子を支え、理解し、調査と必要な行動を求め関係当局に報告する。そしてその子どもが治療や保護、法的支援を受けることができるよう支える。子どもは虐待が明るみに出ることを恐れるだろう。児童虐待は、メールのやりとりほどの頻度で行われている。児童虐待の報告は、電話をかけるぐらいの頻度で行われるべきだ。

 

すべての善良な人々はこうした犯罪に反対し、子どもたちを虐待者や人身取引業者から救出する支援を行うためにもっと何かしたいと望でいる。そして容疑者たちを裁判にかけ、有罪判決を勝ち取りたいと思っている。実際にこのようなことは起きているが、十分な件数ではない。プレダ基金は、人身取引業者や虐待者から、毎年およそ15件の有罪判決を勝ち取っている。これは極めて密かに行われる犯罪であり、子どもたちを黙らせるために、恐怖心や脅しが利用される。児童虐待テロリストたちはどこにでも存在し、自分の子どもですら密かに虐待し、罪を逃れている。父親、おじ、兄弟、聖職者、祖父、隣人、人身取引業者、売春斡旋業者、そしてセックス・ツーリスト。善良な警察やNGO団体がこうした犯罪を阻止すべく闘い、虐待者たちに裁きを受けさせている。

 

Angelica(仮名)は、サンバレス州の町に暮らす13歳だ。フィリピンの田舎町にある小さな掘建て小屋に1人でいたある夜、彼女は性的暴行を受けた。2人の成人男性が人里離れた小屋に押し入り、Angelicaにつかみかかり、彼女を連れ去った。男たちはAngelicaを引きずり出し、草の生い茂る野原へと連れて行き、そこで恥も情けもなく、そして残忍なやり方で13歳の子どもに性的暴行を加えた。その後2人はAngelicaをコートで覆い、彼女を別の場所へ連れて行こうとした。おそらく永遠に彼女の口を塞ぐため殺害しようとしたのだろう。村の近くを通りかかった時、まさに偶然に、虐待者の1人の妻が外で夫を探していた。そして2人が子どもといるのを目撃した。彼女は男たちに文句を言い、口論が始まった。心に深い傷を負いながらもAngelicaは駆け出し、一目散に逃げた。彼女には、男たちがその恐ろしい犯罪を隠すために、自分を殺すつもりだということがわかっていた。

 

Angelicaは自宅である狭い小屋に走って帰った。そこには兄がいた。彼女は勇気を振り絞り、起きたこと全てを話した。2人はすぐに警察へ行き、容疑者の特徴を説明した。男たちは隣人であり、Angelicaの兄の知り合いのようだった。警察はすぐに対応し、必要な規則に従って2人の容疑者を捕まえ、逮捕し、留置した。

 

Angelicaは自治体のソーシャルワーカーに保護された。彼女は明らかに心に深い傷を負っていた。Angelicaとその兄は脅迫を受け、Angelicaは虐待を受けた子どもたちのためのプレダーホームに預けられることになった。現在彼女は安全であり、自分の意思で自らに起きた出来事を話すことができるようになった。彼女は支えられ、認められ、思いやりのある家庭的な環境の中で傷を癒している。Angelicaは、溜め込んだ苦悩や苦痛、虐待者に対する怒りのすべてを吐き出し、そうしたものから解放されるため治療方法Emotional Release Therapyを受けている彼女は自信をつけ、成長し、力を取り戻すだろう。そして自信を持って、そしてはっきりと、自分に起きた真実を証言するに違いない。彼女は、勉強し、自力で新しい生活を始めるために必要なあらゆる支援を受けている。

 

14歳のMelbaを売買したのは2人の姉であった。この2人の姉は人身取引業者であり、若い女の子たちを食い物にしていた。女の子たちをうまく誘い出し、性産業の中で搾取される生活へと陥れていた。Facebookを通じてフィリピン在住のセックス・ツーリストを探し、性行為目的で若い10代の子どもたちを売りに出していた。そして子どもたちと直接会える手はずを整え、自分たちは大金を稼いでいた。被害を受けた子どもたちが受け取るのはすずめの涙ほどの金額だ。

 

Melbaはそうした子どもに1人だった。売買された他の多くの10代の女の子たちと同様に、彼女もまた崩壊した家庭で育ち、不安定で被害に遭いやすい状況にあった。ほとんど教育は受けておらず、人身取引業者に頼って生き延びていた。彼女はネットで裕福なアメリカ国籍の男に売られた。2人は直接会い、金を受け取った人身取引業者は14歳のMelbaを男に引き渡した。男の目的は性的虐待だ。被害を受けた他の子どもたちをこの男に売り渡しのもこの人身取引業者であり、男はオロンガポ市やスービックの売春宿で虐待行為を行なった。この地域は、当局の監視下にあった。男はアンヘレス市Clarkviewにある自宅に戻った。ほどなくして、Melbaと被害を受けた他の子どもたちは、他のセックス・ツーリストたちの元から救出され、人身取引業者たちは逮捕された。子どもたちは安全な環境で回復に努めるべく、プレダ・ホームにやってきた。彼女たちは力を取り戻し、留置されている3人の人身取引業者に対する証言を行った。

 

Melbaはプレダのカウンセラーとソーシャルワーカーに、この外国籍の虐待者について話した。この男は他の多くの子どもたちに対しても虐待行為を行なっていた。プレダは被害者を支援し、男を起訴し、その後裁判に持ち込まれた。裁判は、オロンガポ市の検察官であるBemma Theresa B. Hilario-Logronio裁判官によってオロンガポ家庭裁判所(Branch 12)で行われ、アメリカ国籍のNicholas Gabriel Pyant(61)容疑者に対して逮捕状が出された。プレダは直ちに男の居場所に関する調査を始め、最終的にアンヘレス市の男の所在地を探し出し、関係当局に通報した。

 

2021年7月27日、Melba他3人の未成年者を虐待したNichola Gabriel Pyantは、Rommel S. Barangay 警視監(Police Colonel)の指揮下、複数の虐待行為および未成年者の人身取引の罪で、アンヘレス市内で逮捕された。

 

Pyantの犯罪の被害を受けた子どもたちはプレダ基金に保護され、見守られながら順調に回復している。新しい生活へ向けた準備を進めながら、複数虐待の容疑者に対する証言をし、容疑者に裁きを受けさせるつもりでおり、本人たちもそう望んでいる。この女の子たちは以前にも、3人の女性人身取引業者に対する裁判の中で証言を行なっている。この人身取引業者たちは、被害者たちをまるで動物のようにセックス・ツーリストに売り渡し、彼女たちをPyantに売ったのもこの人身取引業者たちだとされている。

 

正義がなされ、また今後も多くの被害者のために正義がなされるだろうことに満足感が漂っている。そうすることで被害者たちはより幸せな人生を送り、搾取や虐待から解放されることができる。我々はできる限りの支援をしなければならず、極秘でプレダ基金(09175324453またはpredainfo@gmail.com)に報告することもできる。

 

原文:https://www.preda.org/fr-shays-articles/reporting-abuse-should-be-as-common-as-making-a-call/